研究課題
食生活の欧米化と慢性的運動不足によってわが国の肥満人口は増加しており、顕著な増加を示しているが非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis; NASH)である。NASHは明らかな飲酒歴が無いにも関わらずアルコール性肝炎に類似した大滴性の脂肪沈着を特徴とする肝炎である。NASHは肝硬変,肝癌に至る慢性肝疾患であることより、予防や治療に関する医療対応が重要である。しかしながら、その詳細な発症機構は未だ明らかになっていない。その理由には、適切なNASH動物モデルの欠如である。従来のモデルマウスは、ヒトNASHと全身状態と病態の進展速度が異なっており、ヒトとは乖離していることがあげられる。これに対し、当研究室の作製したp62およびNrf2遺伝子の二重欠損(double knockout ; DKO)マウスは、通常食飼育下において加齢とともに著名な体重増加が見られ,ヒトNASHと同様にインスリン抵抗性,2型糖尿病を背景とし,病態が進展した.肝臓では,約10週齢以降単純性脂肪肝,32週齢で炎症細胞浸潤,脂肪性肝炎の病理組織像を呈し,50週齢では病態がより進展して強い線維化像を示した.また,炎症を惹起する血清中のリポ多糖(lipopolysaccharide; LPS)を測定したところ,DKOマウスで高値を示した.腸管の解析では,LPSを産生するグラム陰性菌が増加していること,バリア機能が障害され腸管透過性が亢進していることが明らかとなった.さらに,LPSを処理する肝臓の常在マクロファージであるKupffer細胞の貪食能を解析したところ,DKOマウスで低下していた.脂肪の解析では,顕著な炎症性細胞の浸潤がみられた.NASH発症の成因には肝臓と腸管,脂肪の相互作用とLPSの体内動態が重要であること,さらに、将来的な治療標的となる可能性が示唆された.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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