平成28年度は、前年度に引き続き、変形性膝関節症等により生活機能が低下した運動習慣のない地域在住膝痛高齢者に対して、運動療法(下肢筋力トレーニングおよび柔軟運動等)と認知行動療法(破滅思考や願望思考への介入を中心とした痛み対処スキルトレーニング)を組み合わせた介護予防プログラムの有効性を検証するための介入研究を継続して行った。主要アウトカムは、膝痛、膝機能、運動習慣とし、副次アウトカムとして、身体機能・運動機能、身体活動量、健康関連QOL、痛み関連項目、転倒関連項目、通院・服薬情報、有害事象等を調査した。分析の結果として、介入群は膝痛および膝機能、身体機能や健康関連QOLの下位尺度において短期的・長期的な改善が認められるとともに、プログラム普及のために開発した印刷教材の有効性が明らかになった。 さらに、有効性が確認された介護予防プログラムを地域全体へ普及させるため、対象自治体と協議しながら、対象者の募集戦略や普及地域を選定するとともに、実施自治体のボランティアや協力団体を発掘し、研修を通じてその能力開発を行った。最終的に、ソーシャル・マーケティングを応用した戦略開発および普及トライアルを行い、プログラム普及に向けた課題抽出を行った。その結果、プログラム普及をする際に、いかにして開発したプログラムのコンセプトに合った対象者を参加させることができるかといった対象者の募集戦略の開発が特に大きな課題であることが明らかになった。
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