研究課題/領域番号 |
25282221
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
小柴 満美子 埼玉医科大学, 医学部, 客員准教授 (90415571)
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研究分担者 |
宿谷 昌則 東京都市大学, 環境学部, 教授 (20179021)
山内 秀雄 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (10250226)
國方 徹也 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (50195468)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高感受性期 / 発達障害 / 行動計量 / 生理 / 社会環境 / 情動心理 / 栄養 / 住環境 |
研究概要 |
人間の初期発達は、生涯の生物機能に影響を与える可能性がある。しかし、他の世代もそうであるように、人間がどのように環境を受容し、相互作用し複雑な高次神経ネットワークが形成されるかは十分に解明されていない。特に、近年激増する精神疾患において、環境因子が情動機能に与える影響が大きいことは国際的な同意を得るところであるが、情動・心理機能の状態や推移が定量的に識別される技術は十分に開発されていない。そこで、私たちは、行動・生理・分子などの定量的指標および主観的に識別される情動心理、生体および環境の定量情報を包括的かつ統計的に多変量相関性を探索することで理解を深める方法の開発を進めており、これまで蓄積した知見に基づき多様な指標の間でどのように高次な情報の相関構造が示され、そのなかで生体が情動心理の発達を遂げるかを、動物モデルにより解析法の探索と共に検証を進めた。その結果、新生児期から幼児期相当の発達を短期間でシミュレーションすることができる鳥類および、約1年間で生後の成体までの経過を観察することができる霊長類モデルにおいて、質的に変化しながら徐々に推移し、一定の発達齢で回帰曲線の屈曲として質的変化を認める発達曲線の描出を得た[Sci Rep2報、NeuroSci Lett]。また、この発達は同齢他個体や親などとの社会性環境が影響を与えること、発達の一定齢に環境に対する社会性情動機能形成の高感受性期があることを示唆した。また、高感受性期を環境要素の不足により発達障害のモデル動物を認めた後、生体栄養物質の経口摂取と社会相互作用トレーニングを併用することで、発達性情動機能不全の高感受性期後に有効な「食育+心理相乗療育」の動物モデルを提示した。食、住、社会環境要素を包括視する情動機能の質的な発達推移を捉えた本知見に基づき、新生児臨床の後方視的解析の一部について学会報告し、論文投稿を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の基盤となる情動心理の発達を心理・生理・分子・環境指標に基づく多変量相関性および状態推移として識別できる解析システムの開発が最も困難な要件であるが、発達期モデル動物二種、および、自閉症児童との比較生物学的分析による解析方法の検証を進めて来た結果、国際的な学術評価を得るに至り、行動心理・神経学分野での招待講演および国際著書執筆の招待を得るに至ったことは、想像をはるかに超えた達成だと考える。 また、新生児集中治療室における入院中の胎児期新生児の行動・生理を計測・追跡することができるシステムの開発が順調に進み、環境と相互作用する児の発達の新たな理解法の基盤構築が進んだ。臨床、建築、両分担研究者も、予想以上の知見を得られて、論文報告を準備している。こども環境学会での発表では建築領域の研究者から精神生物学的実証の必要性を示唆され、本研究の意義の高さを再認識することができた。
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今後の研究の推進方策 |
環境、生体の物理的動態を、さらに詳細な物理環境および社会環境要素を記録するシステムの構築を進めているので、これの充足発展を図る。胎児期新生児のより高次な情動心理の発達を識別することができる有用な方法論を探索・開発を行う。現所属先は新生児集中治療室において実践的に治療支援により、病態の劇的な回復を具現化している施設なので、その有効性に寄与する要素を定義する後方視解析を進める。その知見に基づき、計測システム構築を進める。要素は、新生児、および、医療者を対象とする。 本研究で着目する重要な概念である熱物理のエントロピーに関わるエクセルギー指標について、解析システムを構築して行く。 連携下さる研究者、協力者が集まり続け、本研究を実践的に支えている。さらに対話を活性化し、連携によりはじめてみえる情動発達要素と動態モデルを探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文投稿に関わる経費を想定し、対象となる論文が投稿中もしくは準備中のため。 新生児行動・生理計測システムの試作開発が進み、その結果、試作検討すべき要素を得たことから、今後の検討結果次第で進める平成26年度の試作に必要な資金の充実をはかったため。 霊長類行動・生理計測システムの試作開発が進み、その結果、試作検討すべき要素を得たことから、今後の検討結果次第で進める平成26年度の試作に必要な資金の充実をはかったため。 国際論文を少なくとも4報の受理、当該論文のための学術的評価に向けた学会報告、および、著書執筆を予定する。新生児行動・生理計測システム試作上で示唆された要素の具現化をはかる。霊長類行動・生理計測システム試作上で示唆された要素の具現化をはかる。
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