研究課題/領域番号 |
25282232
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大槻 高史 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80321735)
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研究分担者 |
渡邉 和則 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (70602027)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | RNA / 光誘導 / 翻訳 / 細胞分化 |
研究概要 |
本研究では、「光をあてた細胞のみで細胞質内にRNAを導入する技術」(Photoinduced Cytosolic Dispersion of RNA; PCDR技術)をベースに「可視光および近赤外光による細胞機能の制御系」を開発する。 そのポイントは、①近赤外光で効率よく細胞質内RNA導入を起こせるようにすること、②複数波長の光による複数のRNA導入のタイミングの制御を可能にすること、③光でRNA導入を誘導する方法を3次元的な細胞集団や動物個体に適用すること、④「光による細胞機能の制御系」の例として、光による細胞内“翻訳”の人工制御系および光による細胞“分化”誘導系を構築すること、の4点である。その中で、本年度は以下の3点に取り組んだ。 1)近赤外光によるPCDR法の高効率化に向けた光増感剤の探索:700-900 nm程度の近赤外光域の光は生体組織透過性が高いため、厚みのある生物試料に利用するうえで好適である。ここでは、光応答性RNAキャリアの光増感部位を変えてRNA導入効率の比較検討を行い、PCDR法に適用可能な750nmおよび780nmにおいて励起可能な光増感剤をそれぞれ見いだした。 2)異なる波長の光による2種類のRNAの時間差導入システムの構築:1つめのRNAの細胞質内導入の後に、2つめのRNA導入を行うための手法を検討した。2時間以内の時間差導入および8時間以上の時間差導入が可能であることが分かってきた。 3)PCDR法のスフェロイドへの適用:EGFPを安定発現する動物細胞を用いてスフェロイドを作製し、光照射部位特異的にshRNA(anti-EGFP)を細胞内導入し、EGFPの発現抑制を指標に導入したRNAの活性を評価した。局所照射の効果を明確に示すことができていないが、およそ照射部位におけるRNAi効果を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従い、近赤外光によるPCDR法の高効率化に向けた光増感剤の探索、異なる波長の光による2種類のRNAの時間差導入システムの構築、PCDR法のスフェロイドへの適用、を全て行うことができたので、おおむね順調に研究が進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
PCDR法のスフェロイドへの適用については、平成25年度に引き続き取り組み、照射条件および連続観察の方法の検討を行い、局所照射および1細胞照射による部位特異的RNAi効果を明確に示す。さらには、線虫やゼブラフィッシュなど、小さくて厚みの少ない動物個体に対して、PCDR法の適用を試みる。 また、平成25年度に確立した「異なる波長の光による2種類のRNAの時間差導入システム」を用いて、細胞内“amberコドン翻訳”の制御を試みる。すなわち、siRNA(anti-eRF1)およびtRNAの時間差導入に基づいて、amberコドンにおける終結を進める終結因子eRF1のノックダウンにより、amberコドンを用いた非天然アミノ酸導入の高効率化の可能性を探る。 さらには、 PCDR法による細胞“分化”の制御に取り組む。すなわち、単一種あるいは複数種の機能性RNAを用いた細胞分化誘導の例を示し、特に、miRNA導入のタイミングによる分化効率への影響を調べる。以上によりPCDR法の細胞機能制御法としての有用性を示すとともに、ここで取り上げた機能性RNAの作用機構の解明に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究実施上、3月から2か月に亘ってフローサイトメーターをレンタルする必要があった。年度をまたがる使用計画であったため、一貫してH25年度分の基金助成金を使用する方がスムーズだと考え、基金助成金を必要額残した。 上の理由の中で述べた通りH25年度から残した分は主としてフローサイトメーターのレンタルのために使用し、H26年度分は当初の計画通り使用する。
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