研究課題/領域番号 |
25282233
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
品田 哲郎 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (30271513)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | デヒドロアミノ酸 / 立体制御 / ペプチド |
研究実績の概要 |
デヒドロアミノ酸はアミノ酸のα位とβ位に炭素・炭素二重結合を有するアミノ酸類縁体である。アミノ酸では、α位炭素上に置かれているアルキル側鎖が自由に回転できることに対して、デヒドロアミノ酸の側鎖は、アミノ基と同じ側あるいはカルボン酸と同じ側のいずれかに固定される。前者はZ-体、もう一方はE-体と呼び、立体化学が異なる化合物として区別されている。デヒドロアミノ酸に特徴的な側鎖固定の特性は、ペプチドへの組み込みによるペプチドの立体の制御に利用されてきた。また、デヒドロアミノ酸は生物活性天然物の構成成分として天然からみいだされていることから、デヒドロアミノ酸の立体選択的な合成とケミカルバイオロジー研究が活発になされてきた。 デヒドロアミノ酸の有用性は広く認識されている一方で、E-β置換デヒドロアミノ酸とβ、βー二置換デヒドロアミノ酸の幾何異性を制御する合成研究は、ほとんど手つかずのままであった。こうした状況を踏まえて、E-β―置換ならびにβ、β―二置換アミノ酸の立体制御合成法の確立と、それらを含む生物活性天然有機化合物の合成研究に着手した。H26年度は、デヒドロイソロイシンを構成成分に含むアントリマイシンDおよびホモプシンAの全合成研究に取り組んだ。その結果、アントリマイシンDの全合成前駆体と位置づけた3つのフラグメントが合成できた。ホモプシンAについては、左側環状部位を構成する2つの非天然型アミノ酸の合成に取り組み、それらの合成法を確立した。環化に向けたモデル研究を行い、アミノ酸連結の順序、環化反応条件、適切な保護基の組み合わせを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アントリマイシンDについては、合成前駆体と位置づけた3つのフラグメントを縮合、脱保護することで、H27年度の早い段階で全合成が達成できる見通しである。ホモプシンAについても、環化に向けたモデル合成において好結果が得られており、全合成の鍵となる環状部位の合成への目途が立っている。当初の計画以上に、研究が進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1)アントリマイシンDの全合成:3つのフラグメントを順次カップリングすることで標的天然物の全合成を達成する。全合成が達成でき次第、NOEを含む各種NMR解析により、アントリマイシンDの立体構造を明らかにする。あわせて、アントリマイシンDの抗結核菌作用を調べるための誘導体合成を検討する。 2)ホモプシンAの全合成:モデル合成での結果を踏まえて、ホモプシンAの環状部位を構築する。環化は保護基のかさ高さや種類に影響を受けることが想定される。その場合、アミノ酸の連結の順序と保護基の種類を再検討することによって解決を図る。環状部位が構築でき次第、ホモプシンAの全合成へと駒を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費以外の外部資金を博士研究員雇用費にある程度充当できたことによって、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
全合成研究が進展するに従って、使用する試薬の量と種類が倍増する。研究を支障なく進展させる、次年度使用額は、主に消耗品の購入経費に充当する。
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