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2014 年度 実績報告書

GDSLリパーゼによるピレスリン生合成の分子機構解明と昆虫抵抗性植物作出への応用

研究課題

研究課題/領域番号 25282234
研究機関近畿大学

研究代表者

松田 一彦  近畿大学, 農学部, 教授 (00199796)

研究分担者 平竹 潤  京都大学, 化学研究所, 教授 (80199075)
松井 健二  山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90199729)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード除虫菊 / ピレスリン / 生合成 / GDSLリパーゼ
研究実績の概要

本研究では、ピレスリンのエステル結合形成反応を触媒するGDSLリパーゼ(TcGLIP)の触媒、基質認識および活性調節機構を理解するため、本酵素の結晶化に適した条件を探索するとともに、不可逆的阻害剤を合成した。また、本酵素のホモログ遺伝子を改変したシロイヌナズナ変異株を作成したので、以下にその概要を記す。
大腸菌で発現させたマルトース結合タンパク質(MBP)::TcGLIP融合タンパク質をアミロースレジンと陰イオン交換カラムで精製したのち、これをプロテアーゼを処理することで酵素からMBPを除去した。さらに陰イオン交換カラムで精製することで、ゲルろ過で単分散を示すTcGLIPを得た。TcGLIPの結晶化条件を探索した結果、ポリエチレングリコールを含有する溶液で本酵素が結晶化することを見出した。
TcGLIP阻害剤として菊酸構造をもつホスホン酸ジエステルを合成した。すなわちbenzyl carbamateから4段階で導いたジアゾ化合物から銅を触媒として用いてカルベンを発生させ、これを2,5-dimethylhexa-2.4-dieneに付加させることでホスホン酸ジフェニルエステルを得た。さらに本化合物の部分加水分解物をエタノール、シクロペンタノール、アレスロロンと反応させ、3種のヘテロジエステル型阻害剤を得た。ホスホン酸ジフェニルエステル類はTcGLIPを不可逆的に阻害した。
植物の防御機構におけるTcGLIP類縁酵素の役割を理解するため、ホモログ遺伝子をノックアウト(KO)した形質転換シロイヌナズナを作出した。Plant defensin promoter::β-グルクロニダーゼレポーターを有するシロイヌナズナでのプロモーター活性に対する野生株とKO株の葉柄浸出液(PEX)の活性を比較し、特定の条件で野生株のPEXに比べてKO株のPEXが低い活性を示すことを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の第一目標であるGDSLリパーゼTcGLIPの大腸菌での大量発現と短工程での高度精製にはめどがつき、精製した組換えTcGLIPは特定の条件で結晶化することも見出した。結晶化条件の最適化は課題として残るものの、TcGLIPのX線結晶構造の解明に向けて研究は着実に進展したと言える。しかし酵素の基質認識機構を理解するには、基質そのものあるいは別途合成するホスホン酸ジエステルタイプの阻害剤あるいは基質の部分構造と同じ構造をもつ類縁体との共結晶化が必須である。これらを達成するためには、研究速度を上げる必要がある。
ホスホン酸ジエステルタイプのTcGLIP阻害剤については、当初の計画通り、合成ルートを確立した。平成27年度の構造最適化によって、これまでに合成した化合物よりもさらに高活性な阻害剤が創製され、TcGLIPとの共結晶化に適用されると期待される。
モデル植物のシロイヌナズナには、TcGLIPに相同な酵素が存在する。これまでに、本酵素の遺伝子をノックアウトした変異株を作出した。野生株と本変異株との間で防御遺伝子の発現レベルならびに昆虫抵抗性を評価することで、当初の大目標であった植物の昆虫抵抗性機構におけるGDSLリパーゼの普遍的な役割を理解することができると期待される。
以上の研究成果をもとに、研究はおおむね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

最終年度は、当初の計画通り、ピレスリン生合成に関わるGDSLリパーゼのホロ型のみならず、基質、ホスホン酸ジエステルタイプの阻害剤および基質の部分構造をもつ類縁化合物との共結晶化を行い、それらのX線結晶構造を解明する。また、TcGLIPの活性残基を変異した不活性体と基質との複合体のX線結晶構造をも解明する。
ホスホン酸ジエステルタイプの阻害剤については立体異性体が存在する。本研究では、これらの異性体を混合物のままでTcGLIPと共結晶化する方法をとるが、時間に余裕があれば、立体異性体を分離して、共結晶化の効率を高める努力も行う。
シロイヌナズナを用いた実験では、当初の計画通り、TcGLIP相同遺伝子のノックアウト体および過剰発現体における防御遺伝子とホルモンの変動を定量する。またそれらの変異株のコナガに対する抵抗性の変化も合わせて評価し、植物の昆虫抵抗性機構におけるGDSLリパーゼの意義を解明する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] ピレスリン生合成遺伝子の同定に向けたRNAseqデータのバイオインフォマティックス解析2015

    • 著者名/発表者名
      阪森 宏治,小野 直亮,鈴木 秀幸,太田 大策,松田 一彦,金谷 重彦
    • 学会等名
      2015年度日本農芸化学会大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山県岡山市)
    • 年月日
      2015-03-28
  • [学会発表] ピレスリン生合成に関わる TcGLIP の機能および構造の解明(1)-X線結晶構造解析をめざした酵素の発現と精製-2015

    • 著者名/発表者名
      宇都宮 麻衣,松田 和奈,廣瀬 友璃香,伊原 誠,松田 一彦
    • 学会等名
      2015年度日本農芸化学会大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山県岡山市)
    • 年月日
      2015-03-27
  • [学会発表] ピレスリン生合成に関わる TcGLIP の機能および構造の解明(2)-ホスホン酸型反応機構依存的阻害剤の設計と合成-2015

    • 著者名/発表者名
      明石 拓也,竹内 孝幸,宇都宮 麻衣,伊原 誠,松田 一彦,平竹 潤
    • 学会等名
      2015年度日本農芸化学会大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山県岡山市)
    • 年月日
      2015-03-27
  • [学会発表] ピレスリン生合成に関わる TcGLIP の機能および構造の解明(3)-阻害活性と阻害の様式-2015

    • 著者名/発表者名
      竹内 孝幸,明石 拓也,宇都宮 麻衣,伊原 誠,平竹 潤,松田 一彦
    • 学会等名
      2015年度日本農芸化学会大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山県岡山市)
    • 年月日
      2015-03-27
  • [学会発表] シロイヌナズナの腐生菌感染応答シグナル生成にはGDSL リパーゼが関与する2015

    • 著者名/発表者名
      荒井紀梨子,松田一彦,肥塚崇男,松井健二
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部第41回講演会
    • 発表場所
      水産大学校(山口県下関市)
    • 年月日
      2015-01-24
  • [学会発表] ピレスリン生合成関連酵素TcGLIPの発現・精製条件の検討と結晶化2014

    • 著者名/発表者名
      宇都宮麻衣,松田和奈,廣瀬友璃香,伊原誠,松田一彦
    • 学会等名
      2014年度日本農芸化学会関西支部大会
    • 発表場所
      奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市)
    • 年月日
      2014-09-20
  • [学会発表] ケミカルセンシングによる生命恒常性の維持と昆虫制御2014

    • 著者名/発表者名
      松田 一彦
    • 学会等名
      JSPSシンポジウム 日本におけるケミカルバイオロジー研究の新展開
    • 発表場所
      東京大学(東京都文京区)
    • 年月日
      2014-06-14
    • 招待講演
  • [学会発表] 温故知新:ピレスリンから学ぶ昆虫制御の原理2014

    • 著者名/発表者名
      松田 一彦
    • 学会等名
      日本農芸化学会創立90周年記念、第17回中四国支部若手シンポジウム
    • 発表場所
      岡山大学(岡山県岡山市)
    • 年月日
      2014-05-16
    • 招待講演
  • [備考] 近畿大学農学部ホームページ/近畿大学農学部生物制御化学研究室

    • URL

      http://nara-kindai.unv.jp/02gakka/03ouyou/seigyo-lab/index.html

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公開日: 2016-06-01  

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