研究課題
基盤研究(B)
水溶液中におけるMPIase糖鎖部分の会合状態を確認するために、DOSYによる拡散係数測定を行った。MPIaseは脂質部の疎水性のために10-20分子程度会合しているのに対して、酢酸または酵素で処理して脂質部を除去したMPIase(AcOH-MPIaseおよびPP-MPIase)は会合していなかった。AcOH-MPIaseの膜挿入活性を測定したところ、酵素による糖鎖調製の結果とは異なり、膜挿入活性を示さなかった。PP-MPIaseとの比較からは、リン酸基の関与が示唆されるが、未反応のMPIase混入の影響が排除できないため、PP-MPIaseの精製と再評価が必要である。PP-MPIaseでは糖鎖の還元末端の修飾ができないので、蛍光偏光測定やSPR基盤固定には工夫が必要となるため、糖鎖修飾は一時中止し、基質タンパク質の調製を前倒しで実施し、固相合成によるモデルペプチドの合成を行った。疎水性が非常に高いことから、フラグメント縮合法では精製が困難であったため、合成の各段階でのキャッピング処理を行い長鎖ペプチドを一気に固相で合成することで、不純物を低減させることができた。生合成阻害剤候補として、MaNAcAとFuc4NAcのメチル体を合成した。さらにManNAcの1位リン酸化を検討した。亜リン酸化は進行するが、その後の酸化、精製過程で分解することが明らかになった。反応後速やかにリン酸保護基を除去することで1位リン酸は得られるようになった。今後、ピロリン酸化を検討する。
2: おおむね順調に進展している
糖鎖部は還元末端にリン酸が必要であることを見出した。この状態で蛍光や基盤固定は困難であったため、当初の予定を変更したが、モデルペプチド合成を前倒しで実施することができた。
基質ペプチド存在下でMPIaseの溶液NMRを測定し、飽和移動差(saturation transfer difference,STD)-NMR 法により、ペプチド-糖鎖相互作用を検出する。また、ペプチドのシステイン残基を蛍光標識し、蛍光偏光法で糖鎖存在下での見かけ上の分子量を測定することで、ペプチド-糖鎖相互作用を検出する。糖鎖の水酸基側での蛍光標識も検討する。糖鎖部の還元末端側にリン酸を保持したSPR基盤に固定することは難しいため、ペプチド側を固定し、糖鎖部をアナライトとすることで測定を行う。MIPase生合成酵素の同定を目指し、阻害剤となる候補化合物を合成し、その結合タンパク質のアフィニティスクリーニングを実施する。まずメチル化糖による生合成阻害が起こるかどうかを確認する。また、メチル化した3糖部およびその脂質融合体を合成し、生合成阻害を検証する。
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