研究課題/領域番号 |
25282235
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
島本 啓子 公益財団法人サントリー生命科学財団, その他部局等, その他 (70235638)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖脂質 / 膜挿入 / 膜タンパク質 / シャペロン / 生体膜 / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
大腸菌膜挿入因子MPIaseは糖脂質であるにも関わらず、膜タンパク質が膜に挿入する際に重要な酵素様・シャペロン様活性を示す。糖鎖部とタンパク質が相互作用していることを確認するため、STD(飽和移動差)-NMRを測定した。モデル膜タンパク質としては、トランスロコン非依存性(MPIase依存性)で膜挿入することが知られているファージコートタンパク質である47残基の3L-Pf3を化学合成して用いた。タンパク質のシグナルが存在する領域(10 ppm)を照射した場合と領域外(30 ppm)を照射した場合を比較した結果、MPIaseのアセチル基に差スペクトルが観測された。タンパクが存在しない場合には、このような差スペクトルは観測されなかった。この結果から、MPIaseのアセチル基がタンパク質と相互作用していることが立証された。これは、構造活性相関研究で、O-アセチル基が活性に必須であるという、これまでの知見とも一致するものである。次いで、MPIaseと膜との相互作用を調べるために13C-MPIaseを生合成し、固体NMRを測定した。全ての13Cが観測できるDD-MASという方法で測定したところ、MPIase糖鎖とリポソーム脂質の両方が観測できた。一方、運動性が低い成分だけが観測できるCP-MASという方法で測定すると、糖鎖部は検出できず、リポソーム脂質だけが観測された。このことから、糖鎖部は比較的自由に運動しており、膜に吸着していないことが明らかになった。我々は別途の研究にて、ジアシルグリセロールにより低下した膜の運動性をMPIaseが回復させる現象を観測しており、MPIaseの糖鎖部がタンパク質を捕捉して柔らかくなった膜に挿入する機構を推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖鎖とタンパク質が相互作用することを立証できた。また、糖鎖と膜は相互作用しておらず、糖鎖が自由に運動してしていることが明らかになった。別途で検証した膜の運動性のデータも合わせて、膜挿入機構についての知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
生体中でのMPIaseの重要性を示すためには、生合成経路の探索が必要である。今期は生合成についての知見があまり得られなかったので、次年度では、生合成基質または中間体を明らかにし、阻害剤についての知見を得たい。
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