研究課題
本研究では、in vitroで膜蛋白質をスクリーニング可能な技術Liposome display法を確立し、これを利用した膜蛋白質の実験室内機能進化を行うことを目的とする。本年度は、これまでに確立した技術を用いてEmrEの進化分子工学を試みた。大腸菌由来の多剤排出トランスポーターEmrEは複数の毒性化合物を認識できるというユニークな性質を持ち、100アミノ酸程度と小さい上に配向性を持たないという工学利用に有利な性質を有している。EmrEはその特性から生体毒物を検出するバイオセンサー素子として有望であると考えているが、基質との親和性が弱い問題があった。野生型のEmrEにランダム変異を導入したライブラリーを構築し、これを細胞サイズのリポソーム内で無細胞翻訳系を用いて1分子のDNAから膜蛋白質を機能発現可能な形で合成し、さらに合成された膜蛋白質の機能評価をセルソーターで行った。機能としてはEtBrの輸送活性を指標とし、より多くのEtBrを取り込んだリポソームを分取した。このようなスクリーングを3回繰り返し行った結果、野生型EmrEよりも機能が高い遺伝子プールの取得に成功した。前年度までに、EmrEをモデルタンパク質として用いリポソーム内膜蛋白質合成系へトランスロコンを導入し、その動作性を確認した。そこで2015年度は、この実験系の拡張性を検討した。すなわち、トランスロコンを導入によりLiposome display法が適用可能な膜タンパク質のバラエティーが増加したのかを検証した。具体的には、大腸菌の膜タンパク質遺伝子を多数用意し、構築したトランスロコンにより膜挿入効率が向上するのかを検討した。その結果、テストした9種の膜タンパク質のうち7種類でトランスロコンによる膜挿入効率の向上が観測された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
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