研究課題/領域番号 |
25282243
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
檀 一平太 中央大学, 理工学部, 教授 (20399380)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | fNIRS / 拡散光イメージング / 脳機能イメージング / 標準脳座標系 / 解剖学的構造 |
研究概要 |
光を用いた非侵襲脳機能イメージング法、fNIRSは、簡便性という利点によって、近年、急速に普及が進んでいる。他方、研究の最先端においては、脳構造の光伝播特性を活用して信号源を推定する、より精度の高い拡散光イメージング法として進化しようとしている。しかし、信号源推定には脳構造画像が必要であり、fNIRSの簡便性を著しく損なうというジレンマがある。我々はこれまでに、従来のfNIRSにおいて、MRIの取得なしで脳機能データの測定位置を推定する確率的レジストレーション法を確立し、脳機能画像のみで構造画像が得られないという問題を解決し、fNIRS解析法のデファクトスタンダード化をなし遂げた。この実績に基づき、本研究では、この技術を発展著しい拡散光イメージング法と融合させる。すなわち、被験者のMRIなしで、確率的レジストレーション法によって拡散光イメージングの信号源を標準脳座標系に3次元推定する、次世代型fNIRS技術を創生する。 初年度は、参照脳データベースの素材として、研究協力者のハーバード大学Boas教授から、組織別にセグメンテーションがなされた脳画像の提供について、既存データのフォーマット、既存ツールの動作確認をおこなった。この結果、我々の開発した空間解析ツールは微修正を経た上で標準的データについては利用可能であることが明らかとなった。一方、拡散光イメージングに関しては、ハーバード大学側で動作確認を行うべきプログラムが種々存在することが判明した。この結果を待つ間、新たな解析手法として、標準脳座標系を経ず、被験者の頭部構造上で脳構造を予測する新手法を準備することとした。すなわち、予め解剖学的構造の同定された脳構造画像を被験者の頭部形状情報を用いて位置変換し、その場で計測部位に対応する脳構造を予測する手法である。本手法は、拡散光イメージングに対しても有効と推定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画と比較し、解析用リソースの確認と整備に時間が掛かっている。しかし、このプロセスは省略することができないため、解析用リソースの確認と整備は慎重に行う予定である。このため、拡散光イメージングデータの解析については、当初の計画よりは遅れ気味であるが、その一方で、関連する解析手法として、標準脳座標系を介さない空間解析手法の開発が進みつつある。この手法は、拡散光イメージングデータの解析とも整合性が高く、今後、研究開発上のシナジー効果が期待できる。また、研究進展に伴い、関連する研究成果に関しては論文発表も順調に進行している。このため、全体的には、概ね順調な進行状況と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、ハーバード大学からの提供データについて、既存データのフォーマット、既存ツールの動作確認と修正を早期に終了させる予定である。おそらく、現地対応が必要となる可能性が高いため、連携研究者を現地派遣する等の積極的対応によって、作業の効率化を図る。一方、本研究開発の推進にしたがって、新たなデータ解析手法のシーズが次々に生れつつある。特に、3次元画像再構築が行われる前の冗長的な多チャンネル時系列データに関して、離散データのままで統計解析を行う有用な手法を見いだしつつある。この有効性を検討することで、当初26年度に実施予定であった、実行空間解像度の問題が別方向から解決される可能性がある。したがって、離散データ処理手法の開発についても、プロアクティブに進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画と比較し、解析用リソースの確認と整備に時間が掛かっている。しかし、このプロセスは省略することができないため、解析用リソースの確認と整備は慎重に行う予定である。具体的には、連携研究者を海外に派遣し、実際の作業をハーバード大学にて行うことが必要である。また、データと作業の形状が定まる段階で、解析用のワークステーションに最適化を行う必要がある。このため、初年度の使用額を減じることによって、次年度における海外との研究交流を効果的に実施する準備を行った。 2015年度は、連携研究者を海外に派遣し、実際の作業をハーバード大学にて行うことが必要である。したがって、次年度使用予定額は連携研究者の旅費に用いる。また、データおよび解析環境の最適化を試みる。
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