研究課題
光を用いた非侵襲脳機能イメージング法、fNIRSは、簡便性という利点によって、近年、急速に普及が進んでいる。他方、研究の最先端においては、脳構造の光伝播特性を活用して信号源を推定する、より精度の高い拡散光イメージング法として進化しようとしている。しかし、信号源推定には脳構造画像が必要であり、fNIRSの簡便性を著しく損なうというジレンマがある。我々はこれまでに、従来のfNIRSにおいて、MRIの取得なしで脳機能データの測定位置を推定する確率的レジストレーション法を確立し、脳機能画像のみで構造画像が得られないという問題を解決し、fNIRS解析法のデファクトスタンダード化をなし遂げた。本研究では、この技術を発展著しい拡散光イメージング法と融合させる。すなわち、被験者のMRIなしで、確率的レジストレーション法によって拡散光イメージングの信号源を標準脳座標系に3次元推定する、次世代型fNIRS技術を創生することを目ざす。26年度には、実効空間解像度を決定し、脳機能画像について、過剰に詳細な画像を構築することなく、適切な統計的言及ができるようにすることを目指した。fNIRS計測において、3cm程度の間隔でまばらに置かれたプローブから高解像度のデータを再構築することは過剰な推定となってしまう。したがって、連続化脳機能画像データの「実効」空間解像度を検討する必要がある。この実効空間解像度は自動的に求まるものではない。そこで、本研究では、多チャンネルデータの主成分分析によてt固有値を求めて、それをもとに実効多重度を求め、多チャンネルデータの多重性を適切に補正する手法を開発した。現状では、多チャンネルの離散データへの適用であるが、今後、これを連続データに拡張する必要がある。
2: おおむね順調に進展している
本研究開発において、実効解像度の解析は、極めてチャレンジングなテーマであったが、これに対して、主成分分析の固有値を用いた新手法を開発し、発表できた点は評価できる。しかし、当初は論文1報分の内容ですむはずであったが、さらなる解析の必要が生じてきたため、この検討を行う必要が生じた。総合的には順調な達成度と言える。
これまでに統計的手法によって実現された脳機能画像データの実行解像度について、実験デザインの多様化についての検討をおこなう。これまでの方法では、同一被験者の2条件間の比較データのみの解析のみが実施可能であったが、これをより多様な実験デザインへ対応可能になるように拡張する。また、離散データでの有効性が示されたことを受け、連続データでの有効性を示すようにする。これによって、より一般的な手法への拡張をおこなう。また、従来の確率的レジストレーション法をDOTに拡張する一連の解析手法の完成を目指していく。
実効解像度の検証については、本来の計画を変更し、統計的な手法によって解決を試みた。この結果、比較的早期に収束した。一方、海外との連携において、画像解析のフォーマットを調整する必要が生じたため、脳構造画像解析ツールの再検討が必要となったが、連携研究者の異動のため、その遂行が遅れ、4ヶ月の延長をおこなうこととした。
本研究遂行に関する研究打ち合わせ、および、消耗品の購入に使用する。
自治医科大学(門田、山形)、中央大学(檀)らの共同研究グループは、光を用いた無侵襲の脳機能イメージング法である光トポグラフィを利用して、注意欠如・多動症(ADHD)治療薬について、「薬の効き方」を可視化することに成功しました。
すべて 2015 2014 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Neurophotonics
巻: 2 ページ: 015002
doi: 10.1117/1.NPh.2.1.015002
巻: 2 ページ: 020801
doi: 10.1117/1.NPh.2.2.020801
巻: 2 ページ: 025003
doi: 10.1117/1.NPh.2.2.025003
NeuroImage:Clinical
巻: 6 ページ: 192-201
doi:10.1016/j.nicl.2014.09.001
巻: 1 ページ: 025007
doi:10.1117/1.NPh.1.2.025007
http://brain-lab.jp/wp/?p=1040