研究実績の概要 |
1.三頭のニホンザルを組み合わせを変えてペアにし、相手の意図を予測するよう訓練した。それぞれのサルの前には、ホームスイッチが一つずつ、及び左右のターゲットスイッチがあり、またターゲットスイッチは一方が赤、もう一方が緑色に光る。なお左右どちらがどの色に光るかはランダムに決定される。始めにペアのうち一方(Aとする)は、どちらの色を正解とするかをスイッチを押して指定する。なお、どちらが正解に指定されたかは相手のサル(B)には表示されない。次にBがスイッチを押してどちらかの色を選択する。この時、Bが不正解を選択すればAが、正解を選択すればBが報酬を得ることが出来る。従ってAは報酬を得るために、Bがどちらの色を選択するか予想して、それとは異なる色を正解に指定しなければならない。又、A,Bの役割は適宜交代する。この行動実験の結果、1)AはBがそれまで選択していたのとは別なスイッチを正解に指定する傾向がある、2)一方BはAが先にスイッチを選択すると、自分がそれまで選択していたのとは別なスイッチを選択する頻度が増える、など互いに相手の反応を計算に入れて、その裏を掻く様に自己の行動を計画する様子が見られた。 2.自閉症類似の異常行動を示すサル個体について、脳の形態的・組織学的異常を検索したところ、左脳室が強度に拡大していた。死後、脳を摘出しその組織学的異常を検索中である。またこの個体および血縁個体二頭から血液サンプルを入手して、正常個体との比較ゲノミクス解析を遂行中である。 3.広範な皮質の領域からの持続的神経活動記録を可能にする遠隔操作可能な多点電極マニピュレーターを開発した。又、ポリ尿素で被覆した電極が長期間生体内に留置しても組織反応を起こさず、安定して神経活動を記録できる事が判明した。この電極を包括脳リソース支援事業で他の脳研究者に提供している。
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