研究実績の概要 |
大脳基底核には運動発現のアクセルとなる直接路とブレーキとなる間接路の二つの拮抗する経路が存在し、これらのバランスがどちらかに偏ることによって、パーキンソン病の無動やハンチントン舞踏病の過動という病態が生じる。これが現在最も広く受け入れられている従来の大脳基底核スキームである。パーキンソン病には無動と振戦という病態が混在している。従来の大脳基底核スキームでは、パーキンソン病は間接路優位へ偏るという根拠から、無動という病態を説明することはできる。しかしパーキンソン病に不随意運動の一つである「振戦」が生じる理由を同時に説明することはできないなどの矛盾がある。応募者らは基底核のネットワークをウイルスベクタを用いた単一神経トレース等で解析してきた (Fujiyama et al., 2015; Koshimizu et al., 2013; Fujiyam et al. 2011; Matsuda et al. 2009)。今年度はこれに加えて 1) 線条体投射ニューロンのうち、淡蒼球外節のみに投射するニューロン(以下、間接路ニューロン)は淡蒼球外節の周辺領域(以下、淡蒼球外節外殻部:カルビンディン陽性領域)に投射する(Fujiyama et al., in press)。 2) 視床線条体投射には線条体のストリオソーム領域を好むものと、マトリックス領域を好むものが存在する(Unzai et al., Cerebral Cortex, in press) という知見を得ることができた。
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