研究課題/領域番号 |
25283001
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
越野 剛 北海道大学, スラブ研究センター, 准教授 (90513242)
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研究分担者 |
平山 陽洋 北海道大学, スラブ研究センター, 学術研究員 (80570986)
前田 しほ 北海道大学, スラブ研究センター, GCOE共同研究員 (70455616)
今井 昭夫 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20203284)
高山 陽子 亜細亜大学, 国際関係学部, 准教授 (20447147)
田村 容子 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (10434359)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 戦争の記憶 / 社会主義 / 地域間比較 / 戦争表象 / ジェンダー / 記念碑 |
研究概要 |
●8月9-10日に大阪経済法科大学で開催された第5回スラブ・ユーラシア東アジア学会において、越野、福田、向後が国内外の研究者と協力して「戦争犠牲者の表象」及び「第一次大戦後東欧の国境画定」と題するパネルを組織した。 ●9月前半に科研メンバー7名によりミンスク、モスクワで現地調査を行った。ミンスクでは歴史家イーゴリ・クズネツォフ氏に貴重な意見聴取を行った。モスクワでは文芸誌『民族の友好』との共催で、研究会「戦争の記憶を比較する:ロシア、日本、アジア」を開催した。ロシア各地から戦争作家ゲルマン・サドラエフ氏、文学研究者アナスタシア・ガスチェヴァ氏など9名の報告者が集まり、科研メンバーによる日本、中国、ベトナムの事例報告との比較を視野に入れながら、文学、映画、思想史などロシア文化の様々な局面における戦争の意味づけについて議論を行った。 ●12月12-13日に北海道大学スラブ研究センターで開催された国際シンポジウムにおいて、越野と平松によりパネル「ロシアと極東における第二次世界大戦の記憶」を組織した。日本専門家フィリップ・シートン氏、ロシアに関する気鋭の研究者セルゲイ・ウシャーキン氏を招き、戦後から現在にかけて記憶が変容するプロセスなどについて議論を交えた。 ●2014年2月18日に、亜細亜大学において研究会「社会主義と戦争のメモリースケープ」を開催した。科研メンバーに加えて、ロシア・アヴァンギャルド研究の本田晃子氏、中国美術史の呉猛晋氏、ベトナム人類学のショーン・マラーニー氏が報告を行い、戦争の視覚的表象や儀礼化の問題について議論した。 ●学術誌『地域研究』14-2号において、特集企画「紅い戦争の記憶―旧ソ連・中国・ベトナムを比較する」を掲載した。三地域における事例を公的な記憶とオルタナティブな記憶の二つに分け、科研メンバー6名によって分担執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
●複数の科研メンバーによる共同海外現地調査において、計画した以上の成果を上げることができた。当該地域を専門としない研究者に現地を見てもらうことで、今後の比較研究に必要となる知見を多く得ることができた。当初は少数の専門家との意見交換の場と考えていたモスクワでの研究会についても、有能な現地協力者の助けを借りることにより、報告者14名の本格的な国際シンポジウムとなった。ロシア以外の地域の専門家にも通訳を介して報告してもらうことにより、従来の地域に縛られた枠組みでは不可能であった方向での意見交換を実現することができた。 ●上記のモスクワでの研究会のほかに、国際シンポジウムにおける3件のパネル組織、および国内研究会で科研メンバー以外の多くの国内外の専門家を招き、戦争の記憶の地域間比較を推進するためのネットワークを拡充することができた。 ●研究成果の発表についても当初は科研費による報告集の刊行を考えていたが、査読付きの学術誌において科研メンバー6名による特集を掲載することができた。これにより本科研プロジェクトの活動を国内に向けて広く発信する契機を得た。
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今後の研究の推進方策 |
●2014年度には中国・台湾、2015年度にはベトナムでの現地調査を行う。当該地域を専門としない科研メンバーもできるだけ調査に参加する。帰国後にはなるべく別地域の研究者による調査報告を研究会の中で行うようにする。 ●2015年8月に千葉県幕張で予定されている中東欧国際学会(ICCEES)において、越野・前田・高山を中心にパネル2件を組織する。 ●2013年9月のモスクワでの研究会の成果を報告集(日本語)として刊行する。ロシア語による成果は文芸誌『民族の友好』での掲載を予定している。 ●2016年度には、最終成果として論集(単行本)の刊行を目指す。原稿はなるべく早めに準備して、メンバー間での読み合わせや意見交換の場を設けるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
●中間的な成果発表として科研費で報告集を刊行する予定だったが、査読付き学術誌で特集を組むことになったため、報告集を当該年度の成果発表の場として利用するする必要がなくなった。そのため予定していた刊行費用を使用することができなかった。 ●2月18日の国内研究会に参加を予定していた科研メンバーが天候不良と交通機関の停止により開催地に来ることができなかった。そのため予定していた旅費を執行することができなかった。 ●前年度の海外現地調査や国内外でのシンポジウム・研究会での報告成果を発表するため、科研費による研究報告集の刊行を計画に加える。
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