研究課題
本記憶研究は、哲学、インド思想、文学、美学、心理学、精神科学の共同の下、意識や認識の成立・知の探求・社会生活・幸福にとっての記憶の役割を探り、新たな研究展開の基盤となるものを準備していこうとする。平成27年度はこの目的実現に向けて、まず手始めに5月、マルセロ・ボエリ教授(アルベルト・ウルタド大学、チリ)の講演会を、「アリストテレスと記憶」、「プラトンの蝋の塊の比喩とストア派の記憶論」を中心にもった。また8月には、台湾の台北と嘉義で、それぞれ中国文化大学、国立中正大学との協力のもとに国際シンポジウムをもった。このシンポジウムでは、日本からは本研究課題の代表者、分担者の計5名、台湾からは広く哲学、数学、法律、美学、歴史(とくに第2次世界大戦の記憶)などとも関連して、計8名の協力を得、記憶の問題を深く、かつ広範に論じることができた。さらにまた12月には、美学・美術史学な観点から、分担者の木俣が「『ホルトゥス・デリキアールム』写本における「神殿の垂れ幕」:天空とモーセのヴェールとしての解釈」の講演を行い、さらに平成28年2月には、名古屋大学文学研究科の松井裕美特任講師の協力で、「19世紀美術解剖学における身体の構築―理想像の歴史化と理論化の諸問題」をテーマに、記憶と理想化の問題について考察を深めることができた。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は8月に、台湾の台北(中国文化大学)と嘉義(国立中正大学)で国際シンポジウムをもったが、これは非常に有意義であった。台湾からは馬偕医学院、国立台湾大学、中国文化大学、東海大学、国立中正大学、国立政治大学の研究者の発表を得ることができ、広く哲学、心理学、脳神経科学、数学、法律、美学、歴史(とくに第2次世界大戦の記憶)などの問題も論じ、将来の交流に向けても、有意義なものであった。また5月には、マルセロ・ボエリ教授(アルベルト・ウルタド大学、チリ)の講演会をもつことができたが、これもまた南米の研究者との新たな交流を築く意味で意義あるものであった。その他、研究会も開催し、それらの刺激を得て、各研究者がそれぞれの領域で地道に研究を進めることができた。研究全体をまとめた出版の計画ももっていたが、シンポジウム等での発表の成果はすでに各自が、学術雑誌、著書等で発表していることでもあり、また国際シンポジウムでの英語発表の日本語翻訳の問題もあり、一冊の本にまとめることは断念した。それゆえ、各研究者の成果としては「(1)当初の計画以上に進展している」でもよいと思ったが、全体としては「(2)おおむね順調に進展している」にとどめた。
本研究については、1年間の補助事業期間延長を願い出、承認されたが、今後の研究としては、研究代表者は7月の国際プラトン学会で、研究の成果を発表するが、それと同時に、今回の研究を締めくくるシンポジウムを国内で開催する予定にしている。これによって本研究の成果を広く発信したいと考えている。その他については、各参加者が各分野で成果を随時、発表していくことになる。
当初計画を効率的に進めた結果、約67万円の節約をし、研究をさらに進めるべく用いることが可能になった。
節約できた金額を用いて、本研究において達成した成果を海外で発表し、著名研究者からの意見を聞いて研究の精度をさらに高めるとともに、今回の研究を締めくくるシンポジウムを国内で開催したいと考えている。具体的には、例えば7月にブラジリアで開催される国際プラトン学会での発表が念頭にある。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (39件) (うち国際共著 3件、 査読あり 21件、 オープンアクセス 13件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (43件) (うち国際学会 18件、 招待講演 19件) 図書 (9件) 学会・シンポジウム開催 (2件)
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