研究課題
本研究は平成27年度で終了する予定であったが、研究代表者が本務校の理事・副学長に就任したことが主たる理由となって、平成28年度まで一部の研究を延長して継続したものである。研究主題「盛期・後期スコラ哲学の「実践的な知」と現代徳倫理学」について、本研究はまず(1)現代の徳倫理学の源泉と考えられているアリストテレスの倫理学思想(とりわけそのプロネーシス概念)と中世スコラ哲学の主要な哲学者・神学者(トマス・アクィナス、ヘンリクス、スコトゥス、ビュリダンなど)との比較対照を試みた後に、(2)その中世スコラ学者が共通してキリスト教を背景とした神学的基盤のもとに倫理的徳が考察されていながらも、個々の思想家の間には大きな立場の相違があり、従来の研究の枠組であった単純な「主知主義/主意主義」の図式では収まりきれない多様性が彼らの間に存していることが明らかとなった。その上で、(3)正義という徳を主な論点としながら、現代徳倫理学における徳概念について、その長所と短所の両面から、スコラ哲学における諸思想との対比を行いつつ、検討が加えられた。なお、本研究主題が広大な領域に及ぶことも明らかとなったため、本研究の研究分担者が主たる参加者となっている科学研究費基盤研究(B)「西洋中世の「正義論」がもつ哲学史的意味と現代的意義に関する基礎研究」(研究代表者・藤本温、平成28-31年」において、本研究主題が引き継がれる形で、現代徳倫理学と西洋スコラ哲学との比較研究が推進されていることを付言しておく。
28年度が最終年度であるため、記入しない。