研究課題/領域番号 |
25284039
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)
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研究分担者 |
長柄 毅一 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (60443420)
村田 聡 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (70219921)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 3D計測 / 復元鋳造実験 / 青銅器文様鋳造技術 / 微細凹線文様 / 同形繰り返し文様 / 原型施文法 / 鋳型面施文法 / 技術工程解明 |
研究概要 |
中国を中心とした古代東アジアで華ひらいた青銅器技術によって、世界でも類を見ない精緻な文様が鋳造され青銅器表面を飾った。しかし、古代鋳造技法の中でも特に文様の鋳造技法はいまだに詳細が解明できていない。中国、朝鮮半島、日本列島の文様鋳造技術を解明するために、研究初年度の平成25年度は、本研究の3D計測業者の選定をおこなった。1mmほどの凹線文様の鋳造方法を研究するには研究の基礎データとして科学的に計測した正確な断面図や繰り返し文様資料などが不可欠であるが、これまで揃っていなかった。近年、精度の高い微細形状計測が可能になり、根津美術館(東京)所蔵の中国古代青銅器の3D計測(点間距離17ミクロンと96ミクロンの2種類レンズを使用)を行った。点間距離が小さくなれば多くの形状情報を収集するが、計測時間と処理時間が長くなり、美術館の許可時間で終了する計画などが重要になった。3D計測の特徴を認識したうえで、17ミクロン計測の断面図を考察する予定である。 この計測と並行して、青銅鏡文様に見られる特殊な文様肌について実験した。奈良県天理市黒塚古墳から出土した33面の三角縁神獣鏡を悉皆調査し、文様部などの模糊肌、キラワレ肌、銀白色肌などの特異な現象を確認し、鋳造実験によって検証した。実験は焼成鋳型面に粘土、炭粉、油脂を均一に付着させ69面の模擬青銅鏡を鋳造し、その文様肌を評価し古代の特殊技法について考察した。この論文は、69面全ての実験鏡の背面と鏡面、使用鋳型を写真掲載して、アジア鋳造技術史学会誌FUSUS7号に投稿した。こういった特殊な文様肌は青銅鏡に限らず弥生時代の銅矛や銅鐸にも見られ、さらに隋唐鏡にも類似現象があると思われ、文様鋳造技術研究に重要な研究であるが、これまでは注目されていなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の最重要事項は、いかに精緻で正確な3D計測ができるかである。これまでに古代文様鋳造技法研究で欠落していたのは、研究者間で共有できる科学的な文様の断面図などの計測図、計測数値であった。国内の計測業者複数に、こちらが作製した青銅の1mm凹線文様サンプルを計測後、断面図提出を依頼し、最後にサンプルを切断して撮影した写真と比較して精緻さと正確さを検証した。この作業を経た業者選定に時間を要し、今年度は青銅器4点の計測(一部は96ミクロン計測で終了)にとどまり多くの青銅器計測ができなかったうえ、断面図の検証が遅れた。この点から(3)やや遅れの評価とした。 青銅鏡の模糊肌、キラワレ肌、銀白色肌実験をまとめて論文投稿し、以後の文様鋳造技術研究の基礎的考察ができた点を含めれば、(2)おおむね順調になろうが、最重要事項が遅れたため総合的に(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、根津美術館(東京)で中国殷周代の4点の青銅器文様を3D計測したが、途中で終了となっており、残りを継続計測する。東京国立博物館所蔵の朝鮮半島青銅器と中国戦国時代青銅器、および、天理参考館(天理)所蔵戦国時代青銅器の3D計測調査の許可申請作成を進めている。対象機関の許可を得て、点間距離17ミクロンレンズで計測する計画である。この2機関と調整できなければ、泉屋博古館(京都)、白鶴美術館(神戸)などに調査を依頼する。 既に終了した計測青銅器の断面図の扱い(3Dデータの任意位置の断面図作成や照明の変更など)を習得するために、メモリ64GBのコンピュータと専用ソフトを購入し、本研究代表者が操作習得する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本件申請時に利用を計画し申請書に記述した3D計測レンズが扱い店撤退などの理由により使用できなくなり、新たに計測業者を探し選定する作業に手間取った。申請時には小さなロウ模型(切断時に変形し正確な検証はできなかった)の計測、断面図提出であったが、採択になった平成25年4月以降に青銅の鋳造自作サンプルを4社に計測してもらい、断面図を受け取った後にサンプルを切断して1mmの凹線断面写真を撮り、各社の断面図と比較し、精度と料金を検討し1社を選定した。サンプル4社順番に青銅サンプルを郵送するため、全てが出そろうのが遅れ、選定後に根津美術館に計測を打診し、館内許可審査の後、現場計測にこぎつけたのが平成26年2月であった。このために、計画通りの計測数がこなせなかったことと、当初計画よりも計測経費がいくぶん安価になったことにより次年度使用額が生じた。 東京国立博物館(平成26年7月22日、23日予定)、天理参考館(月日未定)の青銅器計測の打診を進めていることと、根津美術館(平成26年5月25日、26日予定)での継続計測などがあり、1日計測40万円で、青銅器1点~2点が計測可能で、8~10点の青銅器を選定中である。また、計測したデータから検討図の経費もかかる。また、3Dデータを研究代表者が操作する64GBパソコンの購入も検討している。
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