研究課題/領域番号 |
25284046
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
川田 都樹子 甲南大学, 文学部, 教授 (00236548)
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研究分担者 |
三脇 康生 仁愛大学, 人間学部, 教授 (40352877)
服部 正 甲南大学, 文学部, 准教授 (40712419)
西 欣也 甲南大学, 文学部, 教授 (70388750)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アートセラピー / 芸術療法 / 臨床心理学 / 芸術学 / 精神医学 / アウトサイダーアート / アール・ブリュット / 障がい者福祉 |
研究実績の概要 |
・公開研究会を以下の通り計5回開催した。「第2回、絵とことば研究会―『セラピスト』はどうことばにしたのか」(12月7日、於甲南大学。「絵とことば研究会」との共催)、「光島貴之 講演会 芸術家にとって創作はセラピーか―ぼくは創作活動で生活の危機を乗りきってきた」(12月15日、主催、於甲南大学)、「第4回 甲南アーツ&セラピー研究会・医療現場におけるアートセラピーの実践」(1月29日、主催、甲南大学)、「第5回 甲南アーツ&セラピー研究会・人が悲しむときとそれが和らぐとき―私の求めている心理臨床」(2月24日、主催、於甲南大学)、「地域のアーティストの地域精神保健サービスへの参画の可能性について―フランスのリールがイタリアのトリエステから学んだもの(ガタリとバザーリア)」(3月23日、主催、於甲南大学)。それぞれ多数の参加者、協力者を得て、芸術理論と、臨床心理学に根差した芸術療法の知見との創造的対話が進行中である。また、美術制度論とともに福祉現場の状況をも含む知見・人脈ともに広がり、見学調査に基づく歴史研究も進んでいる。 ・地域貢献実践プログラムとしての「甲南アトリエ」を創設し、第1回として「親子孫子で楽しむアート 和紙を使った体験型アートワークショップ」(3月12日、主催、於甲南大学)を開催した。 ・その他、当研究の延長として開催された画廊でのシンポジウム「福祉国家のアートと教育―デンマークのビフロスト美術学校の事例から」(3月24日、協力、於ギャラリー島田)も研究会の成果を公表するひとつの機会となった。 ・また、東福寺敷地内の森田療法入院施設「三聖病院」の閉鎖・取り壊しに伴い、そこでの医療実践の資料収集と調査研究を現在進めており、芸術家の協力によって、展覧会とシンポジウムとの形式での公表の計画を進めている。この日本の芸術療法の特殊性の検討も本研究の課題であり、現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のとおり、公開研究会計5回、実践プログラム1回、その他催し1回と、堅実に研究会等を重ね、その都度、科研メンバー間のみならず、広く外部の関係者からの参加も得ることができ、本研究の目的である芸術理論と、臨床心理学に根差した芸術療法の知見との創造的対話が進んでおり、関係者間の人脈も広がっている。 また研究分担者による海外の芸術療法の現場の見学、地域医療の現状報告などによって、着実に知見も広がり、メンバー間での情報と問題意識の共有が実現した。 さらに、実践プログラム「甲南アトリエ」によって、研究の成果を地域に還元し、地域医療の基盤を築きつつある。 歴史研究も、施設の見学とインタビュー調査の形で進めており、フランスのリールとイタリアのトリエステに関する報告等によって、本研究メンバー間での情報と問題意識の共有がなされた。他にも国内の2か所の施設への見学も予定していたが、先方との日程の都合がつかず、次年度へ繰り越されることになった。しかし、東福寺三聖病院の森田療法に関する調査研究と資料収集は着実に進んでおり、研究成果の公表方法として展覧会形式を導入するという画期的な方策の企画も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、研究代表者(川田)、研究分担者(三脇、西、服部)、連携研究者(石谷、市来、今井)、研究協力者(安濟順子、石原みどり、小林昌廣、高岡智子、内藤あかね、宮川貴美子、畑中麻子)を3班に分け、3つの班によるアートセラピーの発展とその歴史の調査を進める。平成27年度の3班の構成は、芸術学班(川田、西、服部、石谷、高岡、小林)、インタビュー・歴史班(川田、三脇、服部、安齊、市来、畑中)、芸術療法現場班(内藤、市来、石谷、今井、石原、宮川、畑中)とし、 内外の芸術療法士へのインタビュー調査や、歴史的施設の見学調査とともに、情報・資料の収集とその分析研究を進める。調査で得られた結果は、まず各班で、さらに全研究メンバーで共有し、定例班会議と公開研究会を積み重ねつつ、成果の取り纏めや公表の方法を話し合っていく。また、それらの成果を基に、阪神地域の芸術療法士のネットワークづくりと連携強化のために「甲南アトリエ」を継続し、公開ワークショップと公開研究会によって、実践的な地域貢献を進めていく。さらにまた、現在計画中の、3つの班の連携によってはじめて成立する「美術展覧会(甲南大学ギャルリー・パンセ)と公開シンポジウムとの連動」という画期的な形式での研究成果報告を実現させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
芸術療法と医療・福祉の歴史を知るうえで貴重な資料を有している医療施設への大掛かりな調査(現在の芸術療法を含む現場見学とインタビュー調査、ならびに歴史的記録資料の調査・収集)を、年度末ごろに予定していたが、先方施設との日程調整がどうしても年度内につかず、先方からの延期の依頼に応じて次年度に行うことになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の施設との日程を調整中であり、芸術学、臨床心理学、精神医学のそれぞれを専門領域とする当研究メンバーによる大掛かりな調査が実現する予定である。また、そこから持ちかえる資料整理に学生アルバイトも増員する予定であり、この計画遂行のためにかなりの旅費・人件費が使用される。また、予定していた訪問調査に加えて、その施設から関係者を招へいして公開研究会を複数回開催することになっているため、その費用も次年度使用となる。 また、こうした芸術療法を含む医療の歴史に関する研究成果の報告として、芸術家との協働によって美術展覧会と公開シンポジウムを連動開催することも予定しているため、人件費・謝金、旅費、その他の費目の使用が見込まれる。
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