平成25年度・26年度・27年度・28年度には、〈1〉冷泉家時雨亭叢書未収録の蔵書の精確な調査と検討を進めた。その結果、影印に解題を付して刊行する必要性の大きな典籍・資史料類を選定することができた。平成26年度には選定した典籍・資史料のそれぞれについてより精細で精確な記述を行ない、解題として影印に付して刊行し始めた。『新古今和歌集 打曇表紙本』『風雅和歌集 春夏』『擬定家本私家集 続』『平安私家集 十三 擬定家本私家集 続々』を刊行した。平成27年度には、『源氏物語 柏木 河海抄 巻第十五 後陽成天皇源氏物語講釈聞書』『草根集 上』『中世私家集 十二』『歌林良材集 歌合集 続』『草根集 下』を刊行した。28年度は『中世歌学集 続 千首和歌』『古今和歌集 蒔絵小箱三代集本』『新千載和歌集 代々勅撰御詠』『悦目抄 古今和歌集古注』『後撰和歌集 蒔絵小箱三代集本』を刊行し、第十四回以後に刊行する予定の典籍・資史料についても調査を進めた。 また、〈2〉調査・検討を通じてうかがうことのできる、テキスト生成の場の問題の解明に関して、『擬定家本私家集』を主要な題材として「擬定家本私家集の再検討」と題するシンポジウムを、平成28年12月の第122回和歌文学会関西例会(会場:京都女子大学)において行なった。基調報告「擬定家本とは何か」を藤本孝一氏が発表し、続いて岸本恵理氏、遠藤邦基氏、小林一彦氏という順序で研究報告がなされ、最後に会場の参加者との質疑応答を行なった。なお、司会は研究代表者(赤瀬)と鈴木徳男氏が務めた。これらの発表はいずれも優れたものであり、中世和歌史研究に活性化をもたらした。 また、冷泉家時雨亭文庫蔵書の調査・検討に従事する専門家(連携研究者など)や、調査対象である冷泉家時雨亭文庫の立ち会い、調書や複写史料の整理などに従事する研究協力者などの旅費および謝金を、適切に執行した。
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