本研究が対象としたのは、イギリス・ロマン主義期の詩人・画家・彫版画師ウィリアム・ブレイク(William Blake)の「彩飾詩」(Illuminated Poetry)とよばれる複合芸術の全作品であった。研究目的は、彼の作品に頻出し、擬人化までされた「手」の意味を、18世紀の医学的ディスコースに関連づけながら、また同時代のゴシック文学における「手」の描写と比較しながら、解明することであった。 本研究の独創的な点は、ブレイク作品に描かれた「手」の意味が「変化していくプロセス」を明らかにして、従来のブレイク研究ではすっぽりと抜け落ちていた「セクシュアルな手」の存在を明らかにするところにあった。
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