研究課題/領域番号 |
25284080
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
天野 成昭 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 教授 (90396119)
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研究分担者 |
近藤 眞理子 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (00329054)
山川 仁子 尚絅大学, 文化言語学部, 准教授 (80455196)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 音声 / 知覚 / 生成 / 範疇境界 / 音韻 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究計画に従い,音韻の範疇境界に関して音声知覚・音声生成の両面から研究を進めた。 音声知覚研究においては,促音と非促音の知覚範疇境界に対する発声速度と無声化母音の影響を探るために,この2要因を組み合わせた実験計画において,閉鎖区間の時間長を変化させた促音-非促音の音声刺激連続体を作成し,それを用いた知覚実験を日本語母語話者を参加者として実施した。その結果,従来と同様にサブワードの時間長を,閉鎖区間に先行するモーラの開始時点と後続するモーラの開始時点との差で定義した場合,発声速度および無声化母音の影響が知覚範疇境界に大きく及び,妥当性のある知覚範疇境界が得られないことが分かった。しかし,サブワードの時間長を,閉鎖区間に先行するモーラの開始時点と後続する2番目のモーラの開始時点との差によって定義すれば,当該サブワードと閉鎖区間の時間長の2変数によって,発声速度および無声化母音の影響が及ばない知覚範疇境界を特定可能であることが分かった。これは音声知覚における相対的音響的不変性の理論を支持する結果であるといえる。 音声生成研究においては,発声速度と無声化母音が生成範疇境界に及ぼす影響をより詳細に明らかにするために,日本語母語話者を参加者とした音声生成実験を追加実施し,生成範疇境界の解析用のデータを得た。解析の結果,発声速度に応じた母音無声化の生起率の詳細な変化傾向および個人差が観察された。 これまでに得られた研究成果をまとめ,国際会議 New Sounds 2016で1件,日米音響学会ジョイントミーティングで1件を発表し,また日本音響学会の大会および研究会でそれぞれ1件を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本語母語話者による音声知覚実験は実施できたが,非日本語母語話者による音声知覚実験は参加者の確保がが予想よりも困難であったため,平成28年度内に予定していた実験の一部を実施できなかったなど研究に遅れがあった。一方,これまでの研究成果をまとめ,国際会議・国内大会等において研究発表を行うことができた。これらを総合すると,全体としては研究の進捗にやや遅れが生じているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
台湾語または韓国語を母語とする非日本語母語話者を参加者とした知覚実験を実施し,母語による知覚範疇境界への影響の特定を目指す。ただし非日本語母語話者を用いた知覚実験は,当初の研究計画よりも実施が遅れているので,参加者数を縮小するなどの方策により終了時期を早め,平成29年度内にデータ取得と解析が完了できるように努める。 これまでに得られた研究成果を総括し,音韻の範疇境界を基軸とした音声知覚・音声生成の特性および両者の相互関係について解析・考察を行い,総合的知見を得る。その知見および個々の研究成果を,ISMBS 2017(International Symposium on Monolingual and Bilingual Speech) や米国音響学会等の国際会議にて発表するとともに,Journal of Second Language Pronunciation や The Journal of the Acoustical Society of America 等の学術雑誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
音声知覚実験において非日本語母語話者の参加者の確保が予想よりも困難であったため,平成28年度内に予定していた知覚実験の一部を実施できなかった。そのため当該実験用として割り当てた助成金の一部を平成29年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した助成金は,平成29年度に実施する音声知覚実験に必要となる機材,実験参加者への謝金,実験用の消耗品等に充てる。
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