研究課題/領域番号 |
25284082
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 神戸松蔭女子学院大学 |
研究代表者 |
松田 謙次郎 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (40263636)
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研究分担者 |
太田 一郎 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (60203783)
平野 圭子 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (60341286)
高野 照司 北星学園大学, 文学部, 教授 (00285503)
佐野 真一郎 岡山県立大学, デザイン学部, 准教授 (30609615)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鹿児島方言 / 札幌方言 / コードスイッチング / 借用語 / 連濁 / アクセント / 可能形 / パネルデータ |
研究概要 |
太田は鹿児島方言若年層話者のアクセントの変異とそれに関連する社会的要因の特定を試み、いくつかの社会的要因が影響を与えていると判断できる結果を得た。その内容については,一部は8月のUrban Language Seminar 11 (広島)で発表し、さらに今年8月にオランダで開かれるMETHODS 15 において発表予定である。 佐野は日本語の音韻現象の中で借用語の有声促音化、連濁、および動詞活用の中で可能形の変化に注目して計画を実施した。コーパスとオンライン実験によりこれらのデータを収集し、さらに混合効果モデルをはじめとする統計手法を用いてデータ分析を行った結果、従来の方法論に従う分析より詳細な知見を得ることができた。 高野は札幌方言アクセントの経年的変化(共通語化)について、小野(1993)を先行調査として、同一の調査票を用いて同一被験者を再調査する実時間パネル調査を札幌市山鼻地区で行った。研究成果の一部を北海道方言研究会例会(2014年2月16日)で発表した。 平野は、日本に一定期間在住した英語母語話者の日本語へのコードスイッチングを検証するため、英語母語話者同士の会話中に観察される英語で表現可能な日本語を抽出し、それらの使用頻度と被験者の社会的ネットワークの関連を考察した。統計分析により、「英語で表現可能な日本語」の使用頻度と被験者の英語教師とのネットワーク強度に強い正の相関関係が見られた。 松田は岡崎敬語調査パネルデータ分析のワークショップを日本語学会2013年度春季大会で開催し、全般的結果を発表した。また回答発話データの名詞、代名詞、動詞の相対頻度分析を行い、そこに加齢効果はないが性差効果が見られ、それが両性の敬語使用の差によることを8月にドイツのマックスプランク研究所で開催されたワークショップで発表し、『国立国語研究所論集』第7号に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本科研課題の最重要課題であった「最新の社会言語理論による日本語言語変異分析、およびその海外発信」というテーマに照らし合わせると、2013年度は各自が各担当分野について口頭ないし論文という形で海外において発信を行ってきている。まずこの点からして昨年度の活動内容には及第点を出せると判断できる。 成果の発信はもちろん国内においても盛んに行われており、全国規模の学会での発表(日本語学会)、また学会誌への掲載(「言語研究」)もなされており、次年度に続く足がかりは十分に築けている。こうした成果の共有と、それらをもとにした議論は、2回の全体会合(2013年9月13日~15日に札幌、2014年3月9日~11日に鹿児島で開催)で行ってきている。初年度は準備段階になることが多い中で、この成果の豊富さは十分誇れるものである。 以上の事情を総合的に判断すると、2013年度の達成度は、当初予想していたものを上回るものと考えても差し支えないものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ともかく「論文」という形でのアウトプットを一つでも多く生産すること、これが今後の研究の推進方策の中心である。口頭発表がなされたものは、国内外を問わず、ともかく印刷媒体への発信を心がけることにしたい。 このような盛んな論文生産体制を強化するためにも、年数回の全体会合は是非開催し続け、できるかぎり討議への時間を割きたいものと考えている。2013年度の2回の全体会合における発表後の討議では、各自が大きな収穫を得ており、それが執筆への大きな駆動力となっているからである。 課題面では、研究者相互の繋がりにもっと発展をもたらすことを挙げておきたい。統計分析、実時間調査などの点からも、もっと共同作業が行われる余地はある。全体会合とは別にメンバーの有志で統計の勉強会を開催しようという声もあり、この点を2014年度以降は意識的に推進し、メンバー各自の研究が結合されることによるシナジー効果を狙いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度半ばで所属先が変更となり、ローカルルールが変わったため、物品購入の際の費用のかかり具合と予算とのずれが生じた。また、研究環境が変わったため、必要となる物品が当初より少なくて済むという場合があった。 物品、旅費、人件費、その他のいずれかにおいて、研究計画遂行のために有効であると思われる新たな項目について使用する予定である。
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