研究課題/領域番号 |
25284112
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
杉野 直樹 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (30235890)
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研究分担者 |
荘島 宏二郎 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 准教授 (50360706)
清水 裕子 立命館大学, 経済学部, 教授 (60216108)
中野 美知子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (70148229)
大場 浩正 上越教育大学, 学校教育研究科, 教授 (10265069)
山川 健一 安田女子大学, 文学部, 准教授 (00279077)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 英語熟達度 / 能力記述文 / 潜在ランク理論 / 大学入試センター試験 / 項目特性 / コンピュータ適応型テスト |
研究実績の概要 |
2014年度は英語熟達度の発達段階とその熟達度を下支えする英語文法能力の発達段階の対応づけを主たる研究課題とした。手法として潜在ランク理論による尺度等化を取り入れることで、大学入試センター試験と文法性判断タスクという二種類の測定課題から得られた能力記述文体系が直接的に関連づけられた。本研究では、1990年・1997年・2004年に実施された大学入試センター試験外国語「英語」本試験の145項目と、与格交替、非対格/非能格動詞、心理動詞、関係節構文、wh疑問文を対象する文法性判断タスク130項目を使用した。大学入試センター試験問題と文法性判断タスクのそれぞれから編集された等化用テストを日本人大学生134名が受検した。大学入試センター試験各年度実受検者データからランダムに抽出された1000件(合計3000件)に加え、これまでに蓄積してきたデータの中から少なくともいずれか1種類を受検している1963件のデータを利用して、同一の尺度上で到達段階を推定した。 その結果、全体として8つの到達段階が特定され、英語熟達度の面では徐々に能力記述が増えるのに対し、英語文法能力の面では比較的大きなストライドで発達が描かれた。例えば、英語文法能力の側面では到達度の第1段階において自動詞の適格文を正しく適格文と判断できるが、自動詞に関する理解が次の段階、すなわち、非文を正しく非文と判断できる段階に進むのは第6段階であった。その一方で、この第1段階から第6段階までの間に、英語熟達度の面では「視覚的手がかりを利用して会話や文章の内容を理解できる」段階から「推論を働かせることができる」段階まで細かな発達が観察された。2014年度はこうした結果を国際学会において報告し、潜在ランク理論による各到達段階の特徴づけを論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では2014年度後半にコンピュータ適応型テスト(CAT)用のサーバを立ち上げ、既存項目により試験的な運用を開始する予定であった。しかし、2014年度は各種テストの等化と能力記述文体系の構築に注力したため、試験運用ができていない状況である。2014年度末には講師を招いた研究会を開催し、潜在ランク理論を基盤としたCATに関する理解を共有し、2015年度内のLRT-CAT実現に向けた準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
アイテム・バンク整備の第2段階として、新規文法事項に関わる文法性判断テストを開発する。学習指導要領に規定される文型・文法事項を広くカバーできるように、現有の文法項目の他、「助動詞・時制/相・前置詞・仮定法・知覚動詞構文・使役動詞構文・there 構文」といった文法項目を加える予定である。その際、「テスト項目準備→テスト実施→分析評価→(新規)項目の選別・編集(準備)」といったサイクルでアイテム・バンクを整備・拡充する。また、これまでの研究との整合性・連続性を考え、共通被験者計画により、既存尺度の等化を継続して行うと共に、新規項目の追加に際しては、第1段階で得られた項目の IRP を固定し、新規項目の IRP を決定する共通項目計画により尺度の等化を行う。こうした尺度等化の基礎的な研究として、同一のデータセットを項目応答理論(IRT)と潜在ランク理論により等化した結果を比較し、第二言語習得研究への両テスト理論を応用することの利点、および考慮すべき点を検討する。 整備されたアイテム・バンクを元に、最終年度となる2015年度は適応型英語運用能力診断テストの開発と運用を行う。同一の潜在ランクに属する学習者が高い確率で正答できる項目群がどのような下位知識・技能を測定しているか、を分析することにより、当該ランクの学習者が持つ能力を記述する。加えて、 LRT による分析により各受検者が所属する潜在ランクがRMP (Rank Membership Profile) として求められる。これら二つの情報に基づき、受検者に対して RMP と所属ランクの能力記述文をフィードバックする、適応型診断テストモジュールを実装した Moodle サイトを構築・運営する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が校務により予定していた海外学会参加を取りやめたこと、およびコンピュータ適応型テストの開発の遅れによりサーバ管理運用経費が発生しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度中に国内外で開催される国際学会に参加し研究成果を報告すると共に、コンピュータ適応型テストの開発・運営を計画通り実施する。
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