研究課題/領域番号 |
25284121
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大津 透 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (70194199)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本史 / 古代史 / 律令法 / 人民支配 |
研究実績の概要 |
隋唐の律令を継受して作られた七世紀後半の律令国家の形成において、喫緊の課題とされたのが調庸制・班田収授制などの人民支配であった。本研究は、律令制研究の第一線にいる研究者を統合し、北宋天聖令の発見にともなう日唐律令比較研究の進展の成果をふまえて、いわゆる公地公民といわれる土地や租税などの人民支配の分析を中心に、さらに治安維持や倉庫などの財政制度などにまで分析を拡大することにより、日本の古代において律令法の成立はどのような意味をち、それは日本の歴史をどのように規定したのかを解明することをめざす。 研究代表者と連携研究者・研究協力者の10名で律令の篇目を分担して、全員参加で東京大学及び関東近郊で5回の研究会を開き、研究成果を報告し、論文にまとめた。、研究代表者が編集委員を務める現在刊行中の『岩波講座日本歴史』に5本の論文として発表され、日本古代史研究の現段階をまとめ、学界をリードする研究成果として大きな影響を与えている。また研究協力者として参加している若手研究者の研究鍛錬の場ともなっている。 中国社会科学院歴史研究所との研究交流を継続しており、5月には第59回国際東方学者会議において李錦繍氏を招いてシンポジウムを開き、研究会にも参加してもらい学術交流も深めた。8月に山西省・太原を中心に唐代律令制関係遺跡や地方県城の精力的調査をしたのち、北京において研究打ち合わせを行なった。また10月には研究代表者が北京に赴き、歴史研究所黄正建氏主催の「中国古文書学国際学術研討会」において報告した。 (連携協力者:坂上康俊・榎本淳一・丸山裕美子・辻正博・大隅清陽、吉永匡史・武井紀子、研究協力者:西本哲也・神戸航介)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『岩波講座日本歴史』古代3において、坂上康俊「律令制の形成」、大隅清陽「律令官僚制と天皇」、武井紀子「律令財政と貢納制」、榎本淳一「遣唐使の役割と変質」の4本の論文、『岩波講座日本歴史』古代4に、吉永匡史「古代国家の軍事組織とその変質」を発表することができた。第59回国際東方学者会議でのシンポジウム「律令制的人民支配の比較研究」では、大津の司会企画のもと、武井・神戸が報告し、坂上・大隅がコメントを担当し、意義のある会議となった。このようにほぼ予定通りの成果を上げているため。また池田温著『唐史論攷』の出版作業に協力し、解説をつけて出版に至ったことは国際的にも大きな意義がある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き来年度も年4、5回全員参加の形で研究会を開き、研究成果をまとめる。来年度は『岩波講座日本歴史』古代5が刊行になり、そこに研究代表者が論文「財政の再編と宮廷社会」を載せる予定である。また来年度は天聖令の保存された天一閣がある寧波などの調査を行い、あわせて成果のまとめとなる論文集と『新唐令拾遺』の刊行に目途をつけたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な物品が適当な額のものがなく、端数が24円残ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の必要な物品に次年度予算額とあわせて使用したい。
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