隋唐の律令を継受して作られた七世紀後半の律令国家の形成において、喫緊の課題とされたのが調庸制・班田収授制などの人民支配であった。本研究は、律令制研究の第一線にいる研究者を統合し、北宋天聖令の発見にともなう日唐律令比較研究の進展の成果をふまえて、いわゆる公地公民といわれる土地や租税などの人民支配の分析を中心に、さらに治安維持や倉庫などの財政制度などにまで分析を拡大することにより、日本の古代において律令法の成立はどのような意味をもち、それは日本の歴史をどのように規定したのかを解明することをめざす。 本年度までの期間延長が認められたので、5月の国際東方学者会議において、中国から天聖令研究に取り組んでいる中国政法大学の趙晶氏を招き、研究代表者の司会のもと、研究会のメンバー辻・西本・丸山・武井・榎本が翻訳・報告・コメントの形で参加して、シンポジウム「東アジアの中の日本文化―奈良平安時代を中心に」を開催し、多くの参加者をえた。あわせて、研究代表者と連携研究者・研究協力者10名で、東京大学及び関東近郊で3回の研究会を開き、研究成果を報告し、『新唐令拾遺』の原稿作成を進めた。また研究代表者が編者となり『摂関期の国家と社会』を山川出版社から出版した。これは27年11月の史学会大会で研究代表者が企画開催したシンポジウムの成果を発展させてまとめたもので、大津のほか研究会メンバーの大隅・三谷・神戸が論文を執筆している。 連携協力者:坂上康俊・榎本淳一・丸山裕美子・辻正博・大隅清陽、吉永匡史・武井紀子、研究協力者:西本哲也・神戸航介
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