研究課題/領域番号 |
25284134
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
夫馬 進 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (10093303)
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研究分担者 |
伍 躍 大阪経済法科大学, 法学部, 教授 (60351681)
寺田 浩明 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60114568)
谷井 陽子 天理大学, 文学部, 教授 (40243092)
臼井 佐知子 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (70185007)
水越 知 同志社大学, 文学部, 助教 (90609538)
増田 知之 京都大学, 文学研究科, 研究員 (60559649)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 『巴県档案』 / 社会 / 訴訟 / 中国 / 清代 |
研究概要 |
本年度は以下の研究を行った。 1)本研究の狙いの一つは、前近代の中国社会と訴訟との関わりの研究と、現代中国の社会と訴訟との研究をつなぐことである。このため、三名の現代中国社会の研究者、三名の前近代中国社会及び訴訟の研究者が一同に集い、国際シンポジウム「現在中国社会の歴史淵源」を開催した。報告者及び論題は夫馬進「現代中国における人民調解(調停)制度と““訴調対接(訴訟・調停の連結)”」、寺田浩明「現代中国“維権(権利擁護)” 運動の法制史的考察」、応星「現代中国の上訪(直訴):訴訟と民衆抗争のロジック」、周飛舟「“農民上楼(農民のアパート集住)”と“資本下郷(農村への資本投下)”:都市化過程における政府、企業と農民」、范金民「江南農村生活の回憶」、滝田豪「中国のグラデーション型政治構造とその歴史的背景」であった。このシンポジウムによって、現代中国社会、および訴訟がいかに清代巴県档案にあらわれるそれと連続性を持つかが確認された。 2)中国四川省档案館で資料調査を行い、かつ『巴県档案』の舞台であった重慶市の農村の調査を行った。とくに重慶農村調査によって、百年前に『巴県档案』に登場する人物と現代の子孫との繋がりが確認された意義は大きい。 3)『巴県档案』の輪読会を合計八回開き、輪読会参加者が最も関心のあるテーマに関わる訴訟案件を一緒に読みながら、当時の社会、訴訟、国家(司法制度)の検討行った。これによって、いっそう『巴県档案』の内実が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)当初の予定通り、国際シンポジウムを開催し、盛況のうちに終わった。これによって、中国社会像の再検討を行うための手がかりを得た。しかしなお、シンポジウムで十分に検討できなかった問題は残っている。 2)重慶農村調査によって百年前の中国社会と現代中国との繋がり、および変貌が明らかになった。 3)当初の計画通り、『巴県档案』を集中して参加者一同で読むことができ、『巴県档案』の理解のみならず、中国社会と訴訟とについての理解を深めることができた。 4)当初、『巴県档案』同治朝のマイクロフィルムを大量に焼き付ける予定であったが、これは十分にできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次のように研究を進める予定である。 1)25年度でできなかった課題、『巴県档案』同治朝のマイクロフィルムを焼きつける。これらの解読を進める。 2)今後とも『巴県档案』の輪読会を続けるが、特に『巴県档案』乾隆朝に軸足を移す。今後は百年前の档案(文書)から、さらに百年遡って同じところで生起したそれを研究することによって、社会と訴訟の時代変化を見る。 3)『巴県档案』乾隆朝の焼き付けを行う。 4)四川省档案館および台湾中央研究院近代史研究所において『巴県档案』の調査を行う。 5)これらの作業をもとに、最終年度には研究代表者及び研究分担者は論文を作成し、『東洋史研究』特集号として公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に『巴県档案』同治朝のマイクロフィルムを焼き付けられなかったこと、『巴県档案』乾隆朝の入手に手間取ったことにより、次年度使用額が生じた。 主に『巴県档案』同治朝を焼き付け、『巴県档案』乾隆朝をさらに入手し、これを焼き付けることに用いる。
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