研究課題/領域番号 |
25284143
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石田 勇治 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30212898)
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研究分担者 |
穐山 洋子 同志社大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10594236)
磯部 裕幸 秀明大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (10637317)
川喜田 敦子 中央大学, 文学部, 教授 (80396837)
辻 英史 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (80422369)
増田 好純 早稲田大学, 人間科学学術院, 研究員 (40586583)
水野 博子 明治大学, 文学部, 准教授 (20335392)
平松 英人 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (50755478)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シンティ・ロマ / ジェノサイド / マイノリティ / 市民社会 / 国民国家 / 排除と包摂 / 生政治 / 移住 |
研究実績の概要 |
今年度の研究は当初の計画にしたがって進んだ。まず、代表者の石田がナチ体制下ドイツにおけるシンティ・ロマに対する迫害政策の研究に取り組み、その政策が絶滅政策へと急進化した過程と要因をユダヤ人政策と比較しながら検討した。次に、分担者の水野と穐山がオーストリア、スイスにおける「反ツィガニズム」の歴史的諸相に着目し、シンティ・ロマの存在形態の変容だけでなく、「反ツィガニズム」に映し出される多数派社会の自他認識の解明に取り組んだ。さらに今年度から分担者となった平松は、近代日本を視野に入れたマイノリティ迫害に関する比較史的研究に市民社会論の観点から従事した。その他の分担者もドイツ、オーストリア、スイス等の文書館、図書館で史資料の収集・分析に従事した。 上記と並行して、研究成果の公表にも努めた。具体的には石田がナチ体制下ドイツ社会についての最新の研究を上梓し、穐山は日本平和学会春季研究大会・分科会「ジェノサイド研究」で「スイス市民社会と移動型民族イエニシュ」を論じ、協力者の澤も同じ分科会で「ジェノサイドに向かう段階」と題する報告を行った。さらにドイツからDr. Peter Widmannを招いて、科研分担者とともに現代ドイツが直面する右翼排外主義・「反ツィガニズム」の現状を論じた。2016年2月のワークショップでは水野が「国民の境界をまたぐ人びと――ブルゲンラント・ロマを考える――」について、穐山が「スイスにおけるナショナル・マイノリティ “Fahrende”という概念の問題」について成果を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は当初の計画どおり順調に進展しているが、2015年度より市民社会研究の論点を加えたことによって、近代国民国家における少数派差別という問題に比較史の観点からアプローチすることが可能になった。それはドイツ、オーストリア、スイスといったドイツ語圏の比較史に貢献するばかりか、日本近代を考察する有益な視座となるであろう。 また当初に計画されていた地域別、時期別の研究を続けながら、同時にそれらを包括し、全体を俯瞰する分析の枠組みを新たに提供することで、個々の研究成果が隣接分野と容易に接合できるようなった。このような点で本研究は、当初の計画以上に進展しているといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
市民社会の論点をさらに掘り下げることで、比較研究の視野を拡大する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用する文献の発行が次年度に延びたため。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は、予定していた文献の購入に充てることとしたい。
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