研究課題/領域番号 |
25284145
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古谷 大輔 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (30335400)
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研究分担者 |
大津留 厚 神戸大学, 大学院人文学研究科, 教授 (10176943)
小山 哲 京都大学, 文学研究科, 教授 (80215425)
中本 香 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (30324875)
中澤 達哉 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (60350378)
後藤 はる美 東洋大学, 文学部, 講師 (00540379)
内村 俊太 上智大学, 外国語学部, 助教 (90710848)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 西洋史 / 近世史 / 近代史 / 普遍君主 / 複合王朝 / 複合国家 / 礫岩国家 / 国家形成 |
研究概要 |
平成25年度は、従来の近世ヨーロッパの国制史研究や政治社会史研究で広く確認されてきた複合政体について比較研究の視座を得るために、日本西洋史学会第63回大会(2013年5月12日於京都)、ヨーロッパ近世史研究会(2013年9月22日於東京)、本科研主催の公開研究会(2014年3月29日於大阪)などの場で、これを「一定の情況で生み出される磁場に応じて可変するポリテイア」(礫岩国家)と定義して紹介するとともに、国内の研究者との議論を通じて複合政体の変動に影響を与えた政体理念や統治実践のあり方に関して論点の把握を進めた。これらの機会を通じて、本研究が提示した「礫岩国家」論は、イベリア半島から環バルト海地域に至るヨーロッパにおいて広く確認できる近世に固有な政治秩序の普遍的性格を活写する視角として有効であるだけでなく、従来の複合政体論を動態的観点から刷新するものとして、西洋史学界に総合的な議論を喚起する可能性をもつものであることを確認した。本研究に参画する研究分担者・連携研究者は、本科研主催の研究会(2013年12月22日於大阪)でこれらの機会で得られた論点を整理し、各自の対象とする地域にこれらの議論をフィードバックさせながら個々の研究を開始した。また本研究が平成26年度以降に欧米の歴史学者たちと連携を進めていくために、本研究に参画する研究者は、従来イベロ・アメリカ(ジャン・フレデリック・ショーブ(フランス社会科学高等研究院))や中央ヨーロッパ(ペトル・マチャ(ウィーン大学歴史学部))、北ヨーロッパ(ハラルド・グスタフソン(ルンド大学歴史学部))を対象に複合国家研究を進めてきた国外の研究者と個別に研究交流をもった。これにより「礫岩国家」論が国際的な比較研究を実現するために有効な共通の視座となることを確認するとともに、平成26年度以降の海外を舞台としたワークショップ開催に道筋を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的の一つは、君主制・共和制・公共善などをめぐる概念史の知見と中世から近代へと至る国家形成史の知見を結びつける分析方法と日本と欧米の歴史学者の緊密な連携をもって、各地域を対象とした従来の国家形成論に総合的な議論を喚起することに置かれている。平成25年度は日本西洋史学会やヨーロッパ近世史研究会などの場で「礫岩国家」論を披瀝することで、従来の複合政体論を動態的観点から刷新することを問題提起することで、日本の西洋史学界に対して議論を喚起する機会を得た。また、本研究のもう一つの目的は、欧米の歴史学界において個別に展開されてきた複合政体の議論について、日本の歴史学研究者が「橋渡し」役となって国際的な比較研究を実現することに置かれている。平成25年度は、北ヨーロッパ、中央ヨーロッパ、イベロ・アメリカなどを対象に複合政体を論じているスウェーデン、オーストリア、フランスの歴史学研究者と交流を持ち、次年度以降の国際ワークショップの開催に具体的な道筋を得た。以上の二点から本研究は当初の計画以上に研究の目的実現にむけて進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、以下の三点の方針に従って今後推進される。(1)本研究に参画する研究者は、次年度以降、平成25年度に得られた成果を基に各自の所属する研究機関において、各々の役割分担分野に従い複合政体のダイナミズムを支える政体理念と統治実践の変化について実証研究を進める。(2)各々の研究者が進めている政体理念と統治実践の変動に関する研究を持ち寄り、各地域を対象とした研究の進捗と知見を共有・確認するために研究会を開催する。本研究が開催する研究会の一部は、日本の西洋史学界に議論を喚起する目的にたって国内の研究者にも公開し、議論の場をもつ。(3)そして本研究に参画する研究者は、スウェーデンを手始めとしてヨーロッパ諸国を訪問して、複合政体を研究する現地の研究者と国際ワークショップの機会を持ち、国際的な比較の観点をもった複合政体の総合的議論を実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は研究分担者の1名が育児期間中にあり、当初予定の海外への渡航調査が1名分行われなかった。(当該の研究分担者については海外渡航の代わりに、国内での研究に必要な機材を購入した。)また今年度は訪日の機会があった海外研究者と国内で直接コンタクトをとるなど、主として国内での研究活動に力点を置いた。これらのことから、当初使用予定の海外渡航費・海外研究者への謝金が圧縮され、次年度使用額が生じた。 平成26年度以降、本研究は海外諸国を舞台とした国際ワークショップの実現を推進する。(平成26年度についてはルンド大学(スウェーデン)にて開催される予定である。)平成25年度に生じた次年度使用額は、この国際ワークショップ開催に必要となる旅費・謝金などに適宜充当する予定である。
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