研究課題
過年度に引き続き、夏季に青森県尻労安部洞窟の発掘調査を進め、洞窟奥部から地域絶滅動物であるヒグマ、ヘラジカの良好な遺体を得ることができた。残念ながら、更新世人類化石の発見には至らなかったものの、彼らの猟果に由来する動物化石に更なる追加資料が得られた意義は大きい。マイクロCTによる断像の観察を進めた結果、過年度出土ヒグマ歯牙については、満3歳の冬眠前に死亡した個体に由来することも明らかとなった。歯牙成長輪の精査を通し、列島における旧石器時代人の猟季を具体的に示すことに成功した本成果は、内外の学者達の注目を集めた。また、過年度ナイフ形石器とも近接する状況で洞窟内から多出したウサギの歯については、形質的特徴の精査から、いずれも今日本州以南に生息するノウサギのそれに酷似し、北海道以北に生息するユキウサギの資料を含んでいないことが示唆された。更新世末期にはすでに津軽海峡が形成されており、同海峡を越えられた陸獣が主に冬季に出現した氷橋を渡れる大型陸獣に限られていた可能性を説く河村善也氏の「氷橋説」。同仮説を支持する証左ともなるこの結果は、考古学のみならず生物地理学にとっても極めて重要な意味を持つ。上記の調査・研究成果については、第3回日本動物考古学会大会、第69回日本人類学会大会、XIX INQUA Congress等で発表した。また、本科研プロジェクトの最終年度に当たっていた昨年度は、11月7日・8日に青森県むつ市で公開シンポジウム『下北の石器時代』と関連遺跡のエクスカーション、1月6日から2月6日にかけては、慶應義塾大学図書館展示室において関連の企画展も開催。同会期中1月16日にはギャラリー・トーク、記念講演会も催し、研究成果のアウトリーチ活動に努めた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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