研究課題/領域番号 |
25284153
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小林 謙一 中央大学, 文学部, 教授 (80303296)
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研究分担者 |
工藤 雄一郎 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30456636)
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60270401)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 考古学 / 先史学 / 年代測定 / 縄紋文化 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年精度を増しつつある炭素14年代測定による縄紋文化の枠組みの再構築として、炭素14年代測定による縄紋時代の細別型式ごとの実年代を比定し、絶対年代での縄紋文化の変遷を示すことを目標とする。実年代により、環境史と対比させた土器変化や集落動態等の文化変化の時間的変化の緩急を検討することで、新たな先史時代の理解を可能とする。そのための基礎となる年代測定については、本研究において目的意識に基づいた測定を組織的に行ったことで、以前からの測定を含め2500以上の縄紋時代の年代測定値を集成した。これは、現時点においてもっともまとまった測定データとなりつつある。 平成28年度は、縄紋時代の較正年代による実年代体系構築を進めた。環境史、生業、居住変遷を統合させた縄紋文化史再編成をまとめて研究総括をおこなうために、共通認識となる実年代として基盤を整備するべく、年代値が不足であった北海道木古内・新潟津南・栃木市ノ塚・神奈川県藤沢などの各地の縄紋早期、北海道や九州の前期、縄紋文化の中心地の一つである東北地方や北陸(新潟県など)・中部地域(山梨県など)など東西の中間地帯の中期、関東・中部地方の後期・晩期を中心に試料収集と測定を進め、年代値を蓄積した。環境史をあわせた形での縄紋時代編年体系の実年代測定を行い、個別の報告を多数公開するとともに、測定結果一覧の成果物公表の準備を進めた。さらに韓国先史時代の試料や測定例についても収集を進めた。 6月11日に、中間報告会として中央大学にて縄紋時代前半期の実年代と環境史的理解、シベリア地方との相互作用を中心に、分担者協力者と公開研究会『日本列島における縄紋土器出現から成立期の年代と文化変化』を行った。現時点での成果を示し、年代的枠組みや時空間的範囲を含めた文化的画期の理解について意見を集め、次年度における全体的な枠組みの設定に向けての準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年代測定として、北海道木古内遺跡、青森県三内丸山遺跡、新潟県津南町、栃木県市ノ塚遺跡、神奈川県藤沢市、大日野原遺跡、東京都武蔵台遺跡、山梨県堰口遺跡、静岡県大鹿窪遺跡、愛媛県久万高原町、福岡圏福岡市、佐賀県佐賀市、鹿児島県牧野遺跡など、多数の年代測定研究を進めた。ほかにも研究分担者による福井洞穴や鳥浜貝塚の測定などにより、かなりの測定事例が補完された。測定が順調であった分、そのとりまとめはやや遅れており、データの集成作業や生態史との関連性については、個別に研究を進め論文や学会発表によって示したほかは、まとまりにはまだ欠けている。この点については、測定が予想以上に進んだだめであり、次年度にはとりまとめを研究の中心とするので十分に取り戻せる範囲と考えている。測定外でも、大日野原遺跡、滝坂遺跡、上黒岩第2岩陰などの年代測定用資料採取を計画にふくめた縄紋集落および居住遺構の発掘調査を進めており、縄紋の定住度など居住形態についても来年度とりまとめに向けて順調に成果が蓄積されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、昨年度までの研究をとりまとめ、高精度の年代測定結果を実年代で配列する。編年体系の不足部分や新たな発掘試料など、20測定程度の測定例を追加しつつ、縄紋文化全体の実年代化を完成させる。具体的には、以前からのデータ集成に加えた集成を縄紋時代の草創期・早期・前期・中期・後期・晩期さらに各期を10期程度に区切った上での年代測定値を集成し、較正年代をIntcal13により算出する。これにより、縄紋時代の実年代の推定根拠が、より充実したものになろう。 同時に、縄紋の居住形態の年代的変化を探る目的で調査に関連させた神奈川県大日野原遺跡、東京都滝坂遺跡、愛媛県上黒岩第2遺跡について、年代研究および居住活動の研究については併せて成果をまとめたい。なお、上記3遺跡の発掘調査自体は本研究とは別にそれぞれの研究で行われるため、発掘調査としての報告は別となる予定である。 ついで、12月に中央大学にて縄紋時代全般の実年代と環境史的理解、大陸との相互作用、さらに同位体分析による縄紋文化の生業の検討を中心に、分担者協力者とともに公開研究会を行う。年代的枠組みや時空間的範囲を含めた文化的画期の理解について広く学界と共有し、さらにその後の研究の展望へとつなげる。 年代と同時に検討する土器付着物の安定同位体比やC/N比から、海洋資源すなわち海産物利用の頻度、C4植物に代表される雑穀栽培等の初期農耕の可能性など生業活動との関連を探ることで、単一ではない縄紋文化自体の枠組みの再構築をさらに進めることができる。将来的には、古地磁気測定、ルミネセンス、酸素同位体などの年代決定法との連動、蛍光X線分析や鉱物分析等の産地推定など自然科学分析と提携を探ることで、今後の新たな研究視点を提示することにもなると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の最後に年代測定を予定していた青森県の土器付着物のうち1点について、前処理の結果、試料の状態が不良の為に即ちぇいできないことが判明したため、測定費が一部使用できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
代替の測定用試料について、すでに手配しており、2017年度の早い段階には次の予定の測定とともに処理することで、2016年度に使用できなかった測定費も使用することができる。
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