今年度は最終年度であり、過去3年間に蓄積した集成・発掘・研究データの総括を実施した。具体的には、1,畿内地域の有力古墳のデータ集成に関する、詳細なデータ一覧と図版一覧の作成(下垣他)、2,首長墓の空間的・時間的枠組みの方法論の提示(和田)、3,首長墓系譜論の方法論と学史的検討(下垣)、4,GIS分析の成果の提示と考察(原田)、5,京都府八幡市ヒル塚古墳の再整理結果の報告および考察、6,京都府京都市双ヶ岡群集墳の測量成果の一部報告(原田)などを行った。とくに1,に関しては2000基近い首長墳を集成し、300基近い古墳の図版データをまとめ、以後の畿内の古墳(群)研究の重要なデータベースを構築できた。また1,に関して、下垣が日本列島の出土鏡集成を刊行し、1,との有機的連携に有効な成果をうみだした。5,に関しては、古墳時代の山城の有力地域である八幡地域の実相にかかわる重要データを復元し、近隣の重要地域である向日地域の五塚原古墳の発掘情報と、そして古墳時代後期の嵯峨野地域の古墳群である双ヶ岡古墳群との史的関係を究明する手がかりを得た。 そして、以上の諸成果を報告書の形式にまとめ、畿内地域の研究者・研究機関に送付し、諸成果の収斂的再構築を行った。また、前年度までの作業に立脚して今年度に集約した畿内地域の有力古墳のデータ・報告書データ・図版データ、GISのデータなどを、紙媒体およびデジタル媒体で保管し、今後の畿内古墳研究の基盤として活用できる形態にした。 以上のように、本科研の交付申請書に記載した「研究の目的」および「研究実施計画」のほとんどの事項を今年度で達成し、一部の事項については当初の予定よりも高いレヴェルで達成することができた。
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