研究課題/領域番号 |
25284159
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研究機関 | 公益財団法人古代学協会 |
研究代表者 |
森岡 秀人 公益財団法人古代学協会, その他部局等, その他 (20646400)
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研究分担者 |
桑原 久男 天理大学, 文学部, 教授 (00234633)
寺前 直人 駒澤大学, 文学部, 准教授 (50372602)
國下 多美樹 龍谷大学, 文学部, 教授 (30644083)
田畑 直彦 山口大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20284234)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 弥生時代 / 初期農耕集落 / 近畿地方 / 銅鐸生産・埋納 / 遠賀川式土器 / 農耕化現象 / 伝播ルート / 小区画水田 |
研究実績の概要 |
日本列島中央部に位置する近畿地方は、弥生時代前半期を要とする初期農耕社会の形成過程を分析していく上に欠くことのできない地域である。その基盤ともいうべき農耕集落の実態を正確な時間軸に則り、諸分野から多角的観察を深め、定着の様相や伝播ルートなどを総合的に研究する姿勢で今年度も取り組んだ。集落跡・弥生土器・磨製石器・打製石器・木製品・金属器などの要所と観察個数を伸ばしながら、連携研究を行った。平成27年度は、タイミング良く、淡路島で松帆銅鐸群が不時発見されたので、初期青銅器の花形、銅鐸に関しても大量埋納の組み合わせや時期、地域性などの研究を急遽組み入れ、近畿の玄関口とも言える三原平野の持つ重要性を再認識した。関連分野の研究成果吸収では、動物考古学からみた農耕化現象、西部ヨーロッパにおける農耕化と武装化の比較考古学を柱に、研究現状を部内で披歴する研究会を2回開催し、討議を行って、疑問点解消に努めた。全体調査は、島根県西川津遺跡で山陰側の様相を調べ、三重県納所・中ノ庄遺跡をはじめ、数地点の土器・石器や木器を実態調査した。近畿からの伝播状況を伊勢湾西岸部で確かめた。個別調査では、展示資料や現在進行形の発掘現場を実見し、関連部分の新資料の探索や再整理の進んだ出土資料の見直しを進めた。大中の湖遺跡木製品・安満遺跡水田跡・田能遺跡金属器・大阪歴史博物館速報資料・新奴国展・関西縄文研究会・松帆銅鐸展示資料などである。また、学会参加や研究会参加を通じ、弥生時代研究や初期農耕社会研究と関係する研究全般に気配りしつつ、本研究の総合化に向けての礎を形成していった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近畿地方に到達するまでの重要遺跡と近畿後方の遺跡の両方の基本資料を点検しつつ、土器・石器・木製品などの観察を充足し、画期や伝播段階などの見通しを立てつつ、目的と成果を照合させての諸研究がかなり前進してきたから。 動物考古学や欧州の考古学の考え方、実証法なども参考としつつ、農耕集団の変化過程の復元を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
銅鐸は使用された紐や銅錆からも年代測定が開発され、実施されつつある。埋納年代などこれらの成果も測定数値は参照して、弥生土器使用の実年代構築と農耕文化の伝播問題を相互に検証しながら、石器や木製品の農耕化段階の掌握を試みたい。また、遠賀川式土器の板付Ⅰb問題が投げかける伝播階梯の認識について、鋭意問題点の検討にも向かっていく。近畿中枢部における近隣調査も随時実施し、伝播ルートを含めた農耕伝播の微動を再検証する。最終年度に当たるため、主要メンバーによりプレシンポを開き、諸検討や討議を経たのち、年末には市民、研究者向けの研究普及を兼ねた本シンポジウム(公開)を開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
近隣農耕集落関係の出土資料実測調査や近畿各府県の基礎資料集成の実働が予定したようには進行しなかったことが要因である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,大阪・奈良・兵庫・和歌山などでの個別調査を充足させ,また,居住域や墓域,環濠に関する資料をできるだけ集成し,初期農耕の微視的伝播とルートに関する議論ができるよう,基礎作業の実践を図る。
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