研究課題
平成27年度は計画年度の最終年度であり、各研究分担者で論文、著書、学会発表を行うとともに、研究成果の総括として日本地理学会春季大会(2016年3月22日、早稲田大学)においてシンポジウムを開催した。個別研究成果としては、雑誌論文2本、著書(分担執筆を含む)3冊、学会発表15本を得た。また、共同研究成果としては上記の日本地理学会2016年春季大会において「自然の生産と消費-「自然の地理学」の視点から」と題するシンポジウムを開催した。また、2015年6月(金沢)と2016年1月(大阪)に計2回の研究会を開催した。本科研では「自然の地理学」の視点から現代における自然と社会の関係を批判的に再検討した。現代における自然と社会の関係において、自然は社会的に生産され、消費されると同時に、社会そのものがそうした自然の生産と消費を通じて構築/再構築されるような再帰的な関係にある。本科研では、このような自然と社会との再帰的な諸関係を、(1)「自然の審美学」(橘、福田)、(2)「自然の政治学」(石山、森)、(3)「グローバル化と自然」(淺野、伊賀)という三つの視点から明らかにした。(1)棚田やガーデニングにおいては審美的な対象として種別的な自然が生産されるとともに、そうした自然が持続可能性や豊かさ、健康などの文脈で読解され、消費されている。(2)自然保護やネイチャーツーリズムにおいては、脱政治化され本質化された「原生自然」や「固有種」という種別的な自然が生産されている。(3)湿地保全はローカルな地域振興の文脈とグローバルな自然保護の文脈でそれぞれ異なる議論が展開されている。また、食糧生産の現場では技術を媒介として自然と社会との異種混交的な関係が展開している。以上の3つのアプローチは相互に密接に関連し合いながら現代における自然と社会の再帰的な関係を構成していることが明らかとなった(中島)。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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地域政策研究年報
巻: 2015 ページ: 73-83
地理科学
巻: 70 ページ: 60-76