平成25年度から29年度までの5年間で、「歴史資料から見た災害列島日本」というテーマで、溝口(研究代表者、名古屋大学名誉教授)は分担者の村山聡(香川大学教授)と土屋純(宮城学院女子大学教授)と共に、調査研究を行った。 本研究は寺院の過去帳を主とし、地誌・統計書、日記、絵図などを加えた歴史資料から災害列島日本の履歴を分析した。溝口は、この間全国で60カ所の寺院を訪問し、過去帳を閲覧し、死者数の推移を比較検討した。その結果、死因を,全国的,地域的,局地的というスケール別にまとめなおすと以下のようになった。1.全国的に死者数が多かった死因:1)飢饉:①天明,②天保,2)疫病:①文久2年のコレラ・麻疹,②大正7年のスペイン風邪,3)戦争:①第2次世界大戦,2.地域的に死者が多かった死因:1)地震:①安政元年地震,②濃尾地震,③関東大震災,④伊勢湾台風,そして,3.局地的な死因:1).海難事故:①因島,②野母,2).ダム決壊:①鹿角市,3).公害:①浜名湖アサリ水銀,②伊勢の工場排水。 村山は、溝口と主に四国の主要寺院を訪問し、災害情報を収集した。九州の天草での上田家日記から防災を検討した。また専門の西欧経済史の視点から南ボヘミアの強力な領主支配によるきめ細かい災害対策を示した。 土屋は、専門の流通地理学の視点から、東日本震災以後の現地取材を繰り返し、生協による共同購入や移動販売など高齢者に対する支援が必要であると提言している。 また2018年3月に3人で洪水常習地のバングラデシュに出かけ、河川浸食で道路が寸断され、家屋が流された現場で聞き取りを行い、水害対策の知恵を学んできた。 こうした成果を、各自、東アジア環境史学会、日本地理学会等の学会で報告すると主に、学会誌や書物で紹介してきた。
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