研究課題/領域番号 |
25284170
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
箸本 健二 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10269607)
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研究分担者 |
佐藤 正志 静岡大学, 教育学部, 講師 (00599912)
菊池 慶之 島根大学, 法文学部, 准教授 (20367014)
久木元 美琴 大分大学, 経済学部, 准教授 (20599914)
駒木 伸比古 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (60601044)
武者 忠彦 信州大学, 経済学部, 准教授 (70432177)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 未利用不動産 / 中心市街地 / 空き家再生 / 中心市街地活性化法 / 人文地理学 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、全国の地方都市(自治体)を対象とするアンケート調査を軸として、以下の①~③の調査研究を行った。 ①アンケート調査の実施:1995年時点で人口規模2万人を超え、かつ特別区および政令指定都市を除外した地方都市846市町を対象とし、a. 空きビル・空き店舗の推移、b. 中心市街地への影響と対応、c. 経済的支援や転用・利活用の支援、d. 利活用の阻害要因、等を骨子とするアンケート調査を実施した。調査は2014年7月に実施し、553自治体から有効回答を得た(回収率65.4%)。 ②典型的な事例地域に対する実態調査:上記のアンケート調査結果から、未利用不動産の利活用について先行的な取り組みを行っている事例を抽出し、各研究分担者の視点に沿った実態調査を行った。まず不動産証券化については、鳥取県米子市のサービス付き高齢者向け住宅の証券化事業に関して実査を行い、事業構造の特徴や関係するアクターの参加プロセス等について情報収集を行った。福祉目的利用に関しては、福祉事業種別の動向を明らかにすると同時に、国の福祉政策動向との関係性を分析した。地方財政の視点からは、財政の逼迫化に起因した公共施設の整理・統合や事業・回収の頓挫が、未利用不動産利活用の阻害理由となっている点を示した。空き家問題の視点からは、長野県岡谷市の家屋台帳データにもとづいて,地区別に建築物の築年数の構成を明らかにした。その結果,都市の中心部と郊外では構成に大きな違いがあることが示された。最後に、中心市街地活性区域の設定・適正規模に関する視点からは、中心市街地活性化区域の推移について各自治体の情報を整理するとともに、区域の地理的推移についてGISデータを整備した. ③海外事例との比較研究:中心市街地における空き家ストックの利活用について先行的事例を多く持つイタリアを対象として、平成26年度はナポリ市における利活用事例のヒアリング調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、平成25年度の基礎研究成果を踏まえ、全国の地方自治体に大規模なアンケート調査を行い、未利用不動産の現状、利活用の可能性や利活用事例、利活用に向けた課題の所在、利活用を推進する活動主体のあり方などについて、具体的な事例を収集することを大きな目的としていた。本調査は、平成26年7月に実施し、65.4%という非常に高い回収率を得ることができた。このため、統計的な集計分析のみならず、具体的な利活用の事例分析に研究を進めることが可能になった。ただ、調査対象とした一部の自治体が、平成26年度末を目処に中心市街地活性化法に基づく基本計画の提出準備を進めている等の事情があり、実査そのもの進捗は、対象とする自治体間で若干の差が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、本研究の最終年度であり、平成26年度のアンケート調査を通じ収集した具体的な事例を踏まえ、いくつかの研究視点から具体的な事例研究をさらに進め、研究全体の収斂を行う予定である。なお具体的な対象事例は、以下の(1)~(6)を想定している。 (1)空き家再生事業に積極的に取り組んでいる自治体:建築ストックの年代別分布の空間構造を明らかにするとともに、空き家対策の具体的な政策について調査する。(2)育児支援、高齢者支援など福祉系への利活用を進める自治体:中心市街地の人口維持や高齢化減少の緩和に実効性を持つ政策のあり方を、自治体および事業主体を対象に調査する。(3)不動産投資スキームを利用した未利用不動産の利活用事例を持つ自治体:人口規模や経済規模が小さい地方都市における投資スキームの有効性や活用のあり方を調査する。(4)まちづくり会社が未利用不動産の利活用を進める自治体:民間事業としての自由度と公的な性格を併せ持つまちづくり会社、あるいはこれに相当する団体が、未利用不動産の利活用に果たしうる可能性を検討する。(5)その他、未利用不動産の利活用に関して、先駆的な政策的対応をとっている地方自治体への実態調査、(6)海外の事例との比較検討:中心市街地に蓄積された建築ストックの利活用という点で歴史的な蓄積が大きなイタリアの諸都市における事例を収集し、日本の事例との比較検討を行う。具体的には、ナポリ、パレルモ、カターニアの3市におけるヒアリングを行う。 これらのアンケート調査(平成26年度)、フィールド調査(平成26、27年度)の結果を取りまとめ、知見の一般化を図るとともに、研究成果の公開を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査の結果を踏まえ、調査対象とする自治体や個別事例を精査の上、実査を進めつつあるが、対象自治体の中に、平成26年度末を目処に中心市街地活性化法に基づく基本計画の申請を準備している自治体が複数あり、これらの自治体について実査を平成27年度に延期する必要が生じたため、旅費・交通費を中心に一部で予算執行が遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の自治体を含め、平成27年度には対象自治体や事例に対するフィールド調査を進める予定であり、平成26年度に執行が遅滞した旅費・交通費についてもここで使用予定である。
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