研究課題/領域番号 |
25284172
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅 豊 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (90235846)
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研究分担者 |
宮内 泰介 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50222328)
竹川 大介 北九州市立大学, 文学部, 教授 (10285455)
川森 博司 神戸女子大学, 文学部, 教授 (20224868)
政岡 伸洋 東北学院大学, 文学部, 教授 (60352085)
加藤 幸治 東北学院大学, 文学部, 准教授 (30551775)
俵木 悟 成城大学, 文芸学部, 准教授 (30356274)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 新しい野の学問 / 公共民俗学 / 民俗学 / public folklore / extra-academic folklore / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本で展開されている民俗学的実践を、現代的かつ国際的な民俗学の方向性である「公共民俗学」という観点から捉え直すことによって、現代市民社会に対応する「新しい野の学問」を構築することを目的としている。本年度は、この目的に鑑み、まず地域住民とともに「公共の問題」や民俗学の社会実践の問題に直接関わってきた本研究メンバーが、個々のフィールドで生起している「新しい野の学問」の生成と深化に不可欠な重要課題をフィールドワークにより精査した。次いで、各メンバーの個別研究成果を共有するために研究会を開催した。この研究会は、基本的に一般公開とし、社会への研究成果の還元に努めた。また日本民俗学会、現代民俗学会等の学術コミュニティーにおいて、中間報告を行い、成果を公開した。さらに、本研究の成果を国際的視野で検討するため、海外学会(菅、俵木:中国民俗学会主催第1回「日中民俗学ハイレベル・フォーラム[首届中日民俗学高層論壇]」)で発表を行い議論を深めた。主たる研究会は下記の通り。 ○第5回研究会:何ができて、何ができないのか―『無形民俗文化財が被災するということ』からつかみとる課題(2014年7月26日:東京大学・現代民俗学会共催) ○第6回研究会:民俗行政と民俗学―「現場」と「学」を取り結ぶために(2014年10月12日:岩手県立大学・日本民俗学会第66回年会) ○第7回研究会:阿蘇たにびと博物館の活動報告・巡見(2014年10月24-26日:阿蘇たにびと博物館等) ○第8回研究会:民俗行政にかかる意見交換会(2015年2月21日:コラボしが21)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1に、当該年度の研究活動により、公共民俗学という観点から多数の民俗学的実践例を検討できたため。具体的には震災振興、民俗文化行政、NPO活動といった現実社会に生起している課題へ、民俗学等の研究者がどのようにアプローチし、どのようなインパクト(功罪を含め)を与えたのかを検討することができた。 第2に、本研究は民俗学(公共民俗学)を基礎としながらも、文化人類学、社会学等の他分野の知見を多く吸収できたため。本研究は狭く民俗学的課題だけではなく、人文・社会科学のなかで脱領域的に問題化される重要課題であるといえる。 第3に、現在、世界的にもっとも公共(部門)民俗学が活発化している中国の情報を収集し、多くの研究者と共同研究の体制を整えられたため。中国の公共民俗学は、世界的な議論の場で注目される重要課題であり、多様なアクターから情報収集し、討論を行うことができた。 第4に、日本民俗学会、現代民俗学会等の学術団体と共催で研究会を開催したり、分科会発表したりすることにより、広く学術界に成果を還元すると共に、さらに公開イベントとすることによりアカデミックの外側(extra-academic)の人びとへも成果を還元できたため。これにより閉じた「仲間内」だけではなく、研究プロセスへの多様なアクターの参画を実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらに本研究を深化させるため、当該年度は前年度に引き続き、まず本研究メンバーが、個々のフィールドで生起している「新しい野の学問」の生成と深化に不可欠な重要課題を国内外のフィールドワークにより精査するとともに、理論研究も行ない、さらに3年間の研究を総括する。 次いで、本研究では各メンバーの個別研究を統合し、成果を発表するために、国内で研究会を開催する(3回程度開催予定)。この研究会は「新しい野の学問」研究会というかたちで基本的に公開し、社会への研究成果の還元に努める。そこに各人の個別研究の成果を持ち寄り、議論を経ることによって、インタラクティブに成果を共有し、各人の研究にフィードバックする。 さらに、海外でのこれまでの成果を吸収し、また、本研究を世界的な研究水準とすり合わせ、本研究の成果を海外へと発信するために、国内学会のみならず国際会議等で発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの本研究の遂行過程で、公共部門民俗学の考究を深化させることの必要性と、その情報の不足が明らかになった。その方面の研究を補強、深化させるために、次年度において、「公共部門の民俗学的実践の実例研究」を行う研究分担者(塚原伸治[茨城大学人文学部准教授])を追加することが必要である。その研究分担者の補助事業に要する経費は、次年度の予算に計上しておらず、それを確保するために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、次年度に追加する新規研究分担者の補助事業に要する経費(20万円)として充当する予定である。なお、不足分の10,300円は、研究代表者の経費で調整することが可能である。
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