研究課題/領域番号 |
25284175
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 素二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50173852)
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研究分担者 |
阿部 利洋 大谷大学, 文学部, 准教授 (90410969)
伊地知 紀子 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (40332829)
中村 律子 法政大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00172461)
古川 彰 関西学院大学, 社会学部, 教授 (90199422)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小さな共同体 / 生活世界 / 日常人類学 / 接合知 |
研究実績の概要 |
今年度は、それぞれが担当する具体的現場に置いて作用するグローバル基準の言説の応用可能性と困難を同定し、同時にローカル知の問題解決能力の有効性と限界を明らかにした。分担者は、それぞれ担当しているもう一つのフィールドにおいて同じ問題系にかんして比較参照のための調査を実施した。具体的には、阿部はカンボジアにおけるクメール・ルージュ体制機の政治責任を問う国際裁判(特別法廷)を対象にした。伊地知は、ジェンダー意識が大きく変容しつつある現代韓国、とりわけ済州島社会と、急激な近代化と経済成長のなかで欧米の価値規範が浸透しつつあるベトナム社会を対象にしてジェンダー意識の変容を調査した。古川は、カトマンズの都市生活環境保全の過程で表れる、欧米の環境保護イデオロギーと、ネワール社会の民俗知の葛藤と接合を考察した。中村は、民主化と近代化のなかで大きく変動しつつある高齢者介護意識について、二つのペクトルの葛藤・接合を考察した。松田はケニア社会が経験しつつある、貧富の格差の急激な拡大や民族・宗教間の対立と憎悪の増幅を対象に、それらを乗り越えるためにアフリカ社会が育んできた異質な制度や価値をつなぎあわせる潜在力を調査した。11月にはネパール、ルワンダ、韓国から共同研究者を招聘してワークショップを実施し、日常人類学にもとづく方法的枠組について、理論的につっこんだ共同討議を行い、その理解を共有することに成功した。 また、すべての分担者が参加し、方法論の実験的検証を共同で行うために、国内のフィールドワーク調査を三重県東紀州地域の五つの集落を対象に実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2014年11月に海外からの共同研究者を含めて京都で開催したセミナー「Kyoto International Seminar 2014:Global Discourses and Local Practices: Towards a Creative and Articulative Knowledge」において、本研究の探求しようとする核心点である「グローバルな規範的言説」と「ローカルで創発的運用実践」の接合メカニズムの理論化に関わる、基本的概念、理論枠組を共有することができた。具体的には、ルワンダの大虐殺のサーバイバーの集合的記憶に関わる現場、ネパールの政治的動乱期における環境保護実践に関わる現場、タイのグローバル・ツーリズムに関わる現場、それに韓国・済州島の4・3事件の記憶と真実究明に関わる現場、さらにはケニアの選挙後暴動における秩序回復と和解に関わる現場にみられる、二つの力(グローバル基準の規範的言説とローカルな運用実践)の絡み合い(entanglement)を事例に即して詳細に検討し、その解釈や分析の方向性について突っ込んだ共同討議を行うことで、個別の事例研究を有機的に結合し総合的に位置づける枠組を共有することができた。
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今後の研究の推進方策 |
京都セミナーによって共有された方法論と分析視点にもとづいて、それぞれが担当するフィールド調査をさらに推進しその成果を、各自がその視点を焦点化する形でまとめたリサーチ・レポートを作成する。それらを共通のプラットフォームにあげて、相互に批判的検討を行い、それをふまえて各自は最終的な調査分担報告書をとりまとめ、それらの成果を連結することで、日常人類学的方法論の深化を理論化することを目的とした総合的な最終報告書を作成する。
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