研究課題/領域番号 |
25284176
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 雅一 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (00188335)
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研究分担者 |
村上 薫 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (00466062)
赤堀 雅幸 上智大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20270530)
小牧 幸代 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (20303901)
辻上 奈美江 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30584031)
嶺崎 寛子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (50632775)
岩谷 彩子 広島大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (90469205)
齋藤 剛 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (90508912)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 暴力 / ジェンダー / セクシュアリティ / コミュニティ / 移民 / ディアスポラ / 地域研究 |
研究実績の概要 |
地中海から西アジア、そして南アジア北西部にいたる地域(以下地中海-西・南アジア帯と呼ぶ)においては、名誉と恥が社会的に重要な観念とみなされてきた。本研究では研究期間を3年とし、こうした観念と密接に関係する「名誉に基づく暴力」(honor-based violence)について地域的文脈を尊重しつつ、包括的かつ体系的に分析することを目的とする。名誉に基づく暴力については、地中海-西・南アジア帯を中心に報告が相次いでいて、日本の新聞などでも取り上げられるようになり、社会的にも注目されている問題と言える。同時にこの種の暴力に注目することでこの地域の特色について考察する。地中海-西・南アジア帯出身者が移住先の欧米で作っているディアスポラ(移民)社会についても研究対象とする。その際「名誉に基づく暴力」をたんなる伝統主義の表出ではなく、都市化、市場化、グローバル化の影響を受けたきわめて現代的な現象であるという観点から、その背景の理解と実態の把握、そして解決の可能性を探求する。2014年度は、本研究の実施2年目ということで、地中海-西・南アジア帯に加え、それを故地とする人々の移民先であるヨーロッパでも調査を実施した。研究会においては、メンバー以外にゲストスピーカーが、英国のパキスタン・コミュニティーでの調査報告やコソボの名誉と女性のセクシュアリティの管理についての報告を行った。2015年度は最終年度にあたるため、日本文化人類学会研究大会で分科会を組織し、本研究の成果の一部を発表する予定である(採択決定)。中東地域における政情不安のため、当初の予定を一部変更せざるを得なかったが、全体としては大きな変更はなく、順調に研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度には、本研究のメンバー二名が、中東社会とジェンダーについての単著を公刊した。これは、女性による日本語での研究ということで重要な学術的貢献である。フィールドワークについては、地中海-西・南アジア帯に加え、移民先であるヨーロッパでも調査を実施した。これは新しい試みであるが、順調に進んだ。ただし、イスラーム国の勃興や、アラブの春以後の情勢不安のため当初のフィールドワークの予定を一部変更せざるを得なかった。しかし、全体として当初の予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は最終年度のため、成果の公表とフォローアップを目的とするフィールドワークが主たる活動になる。前者については5月末に開催される第49回日本文化人類学会研究大会にて分科会を組織し、本研究の成果を公表する。また年度末には公開講演会を京都で開催し、広く一般の人々に名誉に基づく殺人(ならびに殺傷事件)、それに関係する性暴力などの実態を明らかにするとともに、その克服の動きについても紹介する。さらに、本研究成果を研究報告書としてまとめ、公刊する予定である。調査地の政情変化には臨機応変に対処し、危険を避けることを最優先課題にして調査地を選定し、フィールドワークを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者のうち、嶺崎氏は平成27年3月に出産を控えていたため、予定していた北米およびエジプトでの調査を取りやめた。また、岩谷氏についても平成27年6月に出産予定だが、経過が不安定だったため平成26年度冬に予定していたギリシアでの調査を取りやめた。このため、旅費予算となっていた分担金の一部が返金され、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度から連携研究者となった岩谷氏が、平成26年度に取りやめた調査を育児休暇(9月末まで)終了後、行う予定であり、その費用に充てんする。嶺崎氏は28年3月末まで育児休暇を取得しているため分担者から外れている。
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