研究課題/領域番号 |
25285005
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
渡辺 千原 立命館大学, 法学部, 教授 (50309085)
|
研究分担者 |
平野 哲郎 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (00351338)
平野 仁彦 立命館大学, 法学部, 教授 (80189852)
一家 綱邦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50453981)
水野 紀子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40114665)
米村 滋人 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40419990)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 科学と法 / 医事訴訟 |
研究概要 |
25年度は、基礎的な調査期と位置づけて、研究会の開催や、海外での調査を行った。 「医事訴訟研究会」を3回開催し、今後研究を進めていくべき課題についての議論と、主な医療過誤訴訟や薬害訴訟の判例研究を進めた。「相当程度の可能性」侵害論、臨床試験に関する説明義務違反、イレッサ薬害訴訟について、そこで検討された医学的な知見と、その医療側からの評価、医療におけるガイドラインの活用の仕方について検討を行った。判決文から、医学的情報の評価のあり方を正確にトレースすることは容易ではないが、医療水準・因果関係の判断の仕方、ガイドラインの活用に焦点を当てて、事例研究を積み重ねていく必要性について確認し、26年度も引き続き判例研究を中心とする共同研究を進めていく予定である。 また、韓国調査では、韓国の医療ADRの実情についての調査のほか、韓国の医事法研究者との研究交流を行った。フランスへの予備調査では、フランスでの研究協力者との打ち合わせや、パリ大学の科学と法のカリキュラムの学生・担当者へのインタビュー調査を行った。また、ドイツ・イギリス調査では、ドイツでの医事訴訟の審理の調査、イギリスで2013年に本格的に導入されたコンカレント・エビデンスのパイロット調査を行ったゲン教授へのインタビュー調査並びに、裁判官へのインタビュー調査や裁判傍聴調査等も行い、比較法的な研究の手がかりを得た。 専門的知見の利用に関しては、アメリカでの取り組みのほか、コンカレント・エビデンスについては、本家オーストラリアでの研究を進めていく必要もあり、26年度は調査対象として、フランスの本調査、アメリカ調査、可能ならオーストラリア調査も進めるべく、準備を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事例調査については、対象とする事件選びや、裁判所との協力体制作りなどにおいて試行錯誤が必要で、当初の予定通りに進んでいない部分もあるが、課題設定自体が重要であるので、そのための検討はある程度進められたと考えている。次年度は、より、効果の高いターゲットを絞り込んでのインテンシヴな研究を進めていくことが課題となっている。 比較研究に関しては、韓国、ドイツ、イギリス、フランスと当初の予定よりも若干前倒しで、ほぼ順調に予定通りの調査研究を進めており、隣接する内容の研究プロジェクトとも連携しながら、調査協力者とのコンタクトや共同研究も進められており、比較的順調に調査が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
26年度は、25年度に引き続き、医事訴訟の事例研究を進めるほか、医事訴訟以外の科学訴訟と言えるような訴訟、医事訴訟においても刑事事件など、対象を広げた検討も行いつつ、医療と法ないし科学と法の関係や、相互の影響のあり方をはかるために適切な研究対象を絞り込み、厚みのある調査を進めていきたいと考えている。基本的に、こうした国内での調査は、定期的な研究会と、そこで確認した個別テーマを個人が進めて結果を共有するという方法で行っていく。25年度は、どのような論点や対象に絞り込んでいくべきかを検討することに重点を置いたので、26年度は、対象を広げる一方で、やや絞り込んだテーマでの詳細で深みのある調査研究を進めることも課題と考えている。その一部としては、訴訟における専門的知見の活用の仕方であり、その点については医事訴訟を中心に一定のまとめを行いたい。 海外調査については、関連する研究者やプロジェクトと連携をとりつつ、次年度は裁判における科学的証拠の活用について、さらに対象国を広げ(フランス・アメリカ・オーストラリア)調査を行い、その結果をまとめるほか、最終年度に国際フォーラムを開催する可能性も追求したいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、研究の初年度であり、海外調査は予定以上の箇所で行ったが、探索的な調査として、比較的少人数の調査にとどめたこともあり、予定よりは低予算で行えた。 また、研究補助員の雇用も考えていたが、初年次にはそれほど多くの事務量も発生しなかったため、研究代表者のほうで必要な事務作業を行ったために、人件費がほとんど発生しなかった。外部の研究者招聘や専門的知識の供与などについても、他の研究会との共同開催などによって、特段の支出なくある程度行うことができた。 26年度は、25年度よりも、出張人数を増やしてインテンシブな海外調査を行い、また海外からの研究者の招聘も行えればと考えているため、主に海外出張での使用を考えている。それ以外には、秋の医事法学会でのワークショップ開催に向けて、報告者の打ち合わせのための国内旅費も発生するので、国内出張でもある程度の使用が増えることが予定されている。 その他、研究の国内発信のため、ホームページの作成等も検討している。
|