研究課題/領域番号 |
25285005
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
渡辺 千原 立命館大学, 法学部, 教授 (50309085)
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研究分担者 |
平野 哲郎 立命館大学, 法学部, 教授 (00351338)
水野 紀子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40114665)
米村 滋人 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40419990)
一家 綱邦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50453981)
平野 仁彦 立命館大学, 法学部, 教授 (80189852)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医事訴訟 / 法と科学 / 専門的証拠 / 裁判外紛争解決 |
研究実績の概要 |
2014年度は、医事訴訟、医事紛争の解決手段、医事訴訟での専門的証拠や専門家の関与のあり方について、国際比較研究を進めることに力点を置いて研究を進めてきた。 第一に、オーストラリアでのコンカレント・エビデンスと、日本の医事集中部で行われているカンファレンス鑑定の比較調査研究を行った。オーストラリア調査の一環として、10月末に行われたオーストラリア・サウスウェールズ州の土地環境裁判所のプレストン判事を招聘してのシンポジウムに参加して意見交換を行い、東京地裁の医事集中部の判事との意見交換、カンファレンス鑑定の傍聴を東京と京都で1回ずつ行った。これらの調査の結果を、11月末の日本医事法学会でワークショップを開催した。その成果は、「医事法学」に発表予定である。 第二に、韓国の医療仲裁院・医事訴訟調査を行った。韓国では、医事訴訟の急増に対応するために医療専門の公的なADR機関を発足させ、鑑定と調停の2部門での活動を開始しており、裁判との役割分担、連携が進められている。この成果は、連携研究者である李庸吉氏と分担者の平野哲郎・代表の渡辺千原の共著で龍谷法学に公表済みである。 第三に、アメリカ・カリフォルニア州での医事訴訟・ADR調査を行った。代表の渡辺と、分担者の一家・平野仁彦・連携研究者の李庸吉の4名でサンフランシスコの裁判官インタビュー、2種類の民間ADR調査ならびに、ヘイスティングロースクールのフェイグマン教授との意見交換、スタンフォード大学のグリーリー教授との意見交換を行い、ここでの調査結果、研究交流の成果の一部は、渡辺が京都弁護士会での調停シンポジウムで紹介したほか、2015年度の研究成果のまとめにおいて公表予定である。 第四に、ドイツ・フランス調査を行った。分担研究者の米村滋人、連携研究者の中原太郎・本堂毅で、医事訴訟・医療と法、研究不正対応についての調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の比較調査の部分は、オーストラリア、韓国については、調査結果の公表にまで進んでおり、かなり順調に進んでいるといえる。ドイツ、イギリス、フランス、アメリカについては、調査は順調に進んでおり、なお追加の調査を要する部分もあるが、ほぼ予定通りに進捗しているといえる。 日本を対象とする研究については、訴訟における専門家の活用の部分は、特にカンファレンス鑑定に焦点を絞った調査研究は、順調に調査、研究成果のまとめも一部は終わっており、ほぼ予定通りである。若干、焦点を絞りすぎの部分もあるので、もう少し対象を広げて訴訟における科学コミュニケーションの深化の可能性や限界についての検討も必要であり、その部分は2015年度の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、本研究課題の最終年度となり、成果のとりまとめ並びに社会的発信をする段階となる。そこで、2014年度までの調査で成果がまとめられていない部分については、さらに調査結果を整理しつつ、各方面での調査の比較検討、分析を進めていく必要がある。具体的には個別の調査をベースとして各研究担当者が論文や報告書として、紀要や法律雑誌、書籍での研究成果の公表を進めていく。 そして、当初予定していた国際シンポジウムについては、まだ具体的な日程や規模について決まっていないが、これを今年度の柱であり、3年間の調査研究の総まとめとして2015年秋から2016年3月までの間での開催を検討したい。韓国・合衆国・オーストラリアの実務家、研究者を招聘してのシンポジウムを立命館大学で開催する予定である。内容は、訴訟における科学・医療の専門的証拠の有効な利用とコミュニケーションの促進をめざした研究、制度や実践の紹介と比較を想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、本研究の最終年度で、海外から研究者を招聘してのシンポジウムや研究会を開催することを計画しており、その旅費や会場代、資料の翻訳や通訳等に相当の費用がかかる可能性があるために、在る程度のまとまった金額を基金から残している。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年秋から2016年春にかけて、アメリカの科学的証拠の研究者、科学技術社会論の研究者を招聘しての公開研究会の開催を行うことを検討している。場所は京都と東京、可能であれば仙台の3カ所への巡回研究会の可能性を検討中である。
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