研究課題/領域番号 |
25285008
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
市橋 克哉 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40159843)
|
研究分担者 |
樹神 成 三重大学, 人文学部, 教授 (20186703)
本多 滝夫 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (50209326)
小畑 郁 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40194617)
白藤 博行 専修大学, 法学部, 教授 (90187542)
徳田 博人 琉球大学, 法文学部, 教授 (50242798)
岩崎 恭彦 三重大学, 人文学部, 准教授 (20378277)
晴山 一穂 専修大学, 法務研究科, 教授 (50106952)
KUONG TEILEE 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 准教授 (80377788)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 行政法 / グローバル化 / 私化 / 行政法支援 / 分節接合 / 契約 / 多極行政法 / PPP |
研究概要 |
平成25年度の本研究は、研究代表者および研究分担者が四つの研究班に分かれて実施した。 ①アメリカ・世界銀行班 世界銀行のGlobal Forum におけるGIZ、コンセイユデタ等のワークショップにおいて情報交換と資料収集を行った。グローバルな法システムと国内法システムの契約等による接合の分析アプローチの有効性を検討した。Jeffery Lubbers教授の参加を得てアメリカの行政法支援動向についてワークショップを開催した。 ②ヨーロッパ・世界銀行班 世界銀行・法務担当副総裁に行政裁判官出身者を出すとともに、Global Forumにも加盟し、公私協働契約(PPP)の法整備支援に取り組むコンセイユデタを訪問し、公と私がその境を超えて契約により接合する法制度に関する情報交換と資料収集を行った。また、ヨーロッパ評議会判決執行部を訪れ、法執行におけるヨーロッパ法システムと国内法との接合の問題について情報交換と資料収集を行った。 ③中国班 JICAと連携し、行政訴訟法改革について全人代法制委員会とワークショップを開催し、意見交換を行った。中国政法大学等の行政法研究者や裁判官の出席も得た。公法形式だけでなく、公私の枠を超えて契約等私法形式を用いる行政活動とそれに起因する紛争も増えていることから、中国側は、当事者訴訟・民事訴訟への関心が高く、これに関して意見交換を行った。 ④ウズベキスタン・モンゴル班 ウズベキスタンについては、JICAと連携して、司法省と共同で一昨年末に制定された許可法の解説書を作成し公刊した。モンゴルに関しては、現在作成中の一般行政法典草案について、起草グループと意見交換および資料収集を行った。日本およびドイツ法の国内法への需要の問題を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四つの研究班すべてにおいて、研究はおおむね順調に進展している。 ①アメリカ・世界銀行班は、世界銀行Global Forum のGlobal Weekにおいて情報交換および資料収集を行うことで昨年度の目標を達成した。これまで交流があったGIZ等の法律家に加えて、世界銀行の法律家とのネットワークが確立し、世銀のグローバル行政法と国内行政法の接合に関する共同研究計画の作成へと進展したことは大きな成果である。 ②ヨーロッパ・世界銀行班 公私協働契約(PPP)の支援に取り組むコンセイユデタおよび法の執行問題に取り組むヨーロッパ評議会において情報交換および資料収集を行うことで昨年度の目標を達成した。新たにコンセイユデタ裁判官とのネットワークが確立し、今年度Global Weekにおいて、行政法整備支援について、同一セッションで発表する予定である。 ③中国班 行政訴訟法改革について全人代法制委員会行政法室とワークショップを開催し、意見交換を行ったことで、昨年度の研究計画の目標を達成した。現在、行政訴訟法改正草案がパブリックコメント手続に付されており、そこには、われわれとの意見交換の成果も反映されている。今年度は、引き続き、行政復議法改正草案について意見交換する予定である。 ④ウズベキスタン・モンゴル班 ウズベキスタンでは、われわれの共同研究が注目された結果、もっとも権威ある研究機関である大統領直属国家行政学院とのネットワークが確立した。今年度ワークショップを行う予定である。モンゴルに関しては、一般行政法典草案起草グループと意見交換および資料収集を行ったことで、平成25年度の研究計画の目標を達成した。モンゴルの行政法研究者および行政裁判官とのネットワークを活かし、今年度は、モンゴル行政裁判所設立10周年という節目の年にもあたるため、これを記念した行政訴訟に関する共同のワークショップを行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
①アメリカ・世界銀行班 前年度調査の結果、行政法整備支援のinnovationは、契約手法によって接合する多極行政法の生成をめぐって起こっているという仮説を得た。法整備支援・協力のグローバル空間を対象にこの仮説の検討を行い、その成果に基づくワークショップを世界銀行のGlobal Forum で行う。 ②ヨーロッパ・世界銀行班 昨年度行えなかったマックスプランク研究所の理論動向を調査する。契約手法等によって接合する多極行政法の例であるコンセイユデタやヨーロッパ評議会が推進するグローバル・リージョナルな法整備支援・協力の手法を分析・検討する。その成果を踏まえたワークショップを、コンセイユデタ裁判官の参加も得て世界銀行と日本で行う。 ③中国・ウズベキスタン・インドネシア班 アメリカ、日本および世界銀行が行う行政法整備支援・協力の「空間」(例えば、世銀融資契約と政府調達契約の接合)の調査を行う。欧米の新しい行政法整備支援・協力理論およびグローバル行政法の理論の豊富化をめざすワークショップをインドネシア・ガジャマダ大学で行う。中国については、引き続き全人代と協力して、行政復議法改正について意見交換を行う。なお、広州で開催される東アジア行政法学会の際にも、意見交換の場をもつ。 ④ウズベキスタン・モンゴル班 欧米の行政法整備支援理論およびグローバル行政法の理論の有効性について、ウズベキスタンおよびモンゴルで検証する。とくに、モンゴル行政裁判所創設10周年記念シンポジウムに参加する機会に、ワークショップを現地で行う。これは、現地の行政法と日本、ドイツ等から継受した新しい行政法との異種混成的な分節接合を特徴とする新しい行政法理論の構築を検証するものとなる。また、ウズベキスタンでは、新たなパートナーとなった大統領直属国家行政学院と共同でワークショップを行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、第一に、当初、研究分担者がドイツ・ハイデルベルグのマックスプランク比較公法・国際法研究所を訪問し、Armin von Bogdandy所長、Stephan W. Schill上級研究員等との意見交換および資料収集を行う予定であったが、研究分担者と研究所側との日程が調整できなかったため、この計画を次年度に実施することとしたという研究計画の変更によるものである。第二に、研究分担者が当初予定していた世界銀行のGlobal Forumの会議に、日程の調整がつかず参加しなかったため、この計画を次年度開催のGlobal Forumへの参加に変更したことによるものである。 昨年度実施できなかった上記のマックスプランク比較公法・国際法研究所および世界銀行のGlobal Forumへの訪問・参加、ならびに、そこでの意見交換および資料収集について、今年度に実施することで、現在生じている次年度使用額の執行を行う計画である。
|