研究課題/領域番号 |
25285010
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡村 忠生 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30183768)
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研究分担者 |
渡辺 徹也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10273393)
高橋 祐介 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50304291)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 消費課税 / ヒューマン・キャピタル / 消費税 |
研究実績の概要 |
本年度は、①個人への消費課税に関しては、消費税の税率アップが再度延期され、これに伴う軽減税率やインボイス制度の導入も遅らされたことから、消費課税に関する基本理論にシフトして検討を進めた。また、消費課税の国際的側面について、仕向地基準の意味を中心に検討を進めた。②企業への課税については、インセンティブ報酬とスピンオフ税制に関して、ヒューマン・キャピタルの観点からの検討を行った。前者については、平成28年度改正で導入された役員に対する一定の譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)に関する損金算入ルールにおいて、法人側と役員側の課税が不整合になっている点を明らかにした。後者については、新しい支配の継続の考え方を検討した。③富や所得の再分配については、ふるさと納税制度において、自治体へ寄付できる上限額(2000円以上の負担なしで返礼品を受け取れる上限額)が高額納税者ほど大きいことから、返礼品の存在が格差を拡大させていることを指摘した。また、マイナンバー法等の進展を踏まえ、生活困窮状況にある個人を念頭に、租税手続法と民事実体法との交錯領域について検討を行った。アメリカ倒産法のいわゆるchapter 7では、清算処理手続において、たとえば扶養債権のような特に個人が生活を営む上で重要な無担保債権を確保するため、租税債権が劣後する制度が採用されている。個人の生活保障のための政策的な租税債権の劣後という、これまでの日本には存在しない発想を検討する必要性が認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、6回の研究会を開催して研究成果の報告と意見交換を行い、研究成果を順調に公表した。
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今後の研究の推進方策 |
消費税の税率アップがさらに遅らされたことを考慮しつつ、軽減税率やインボイス制度、さらに、仕向地主義課税の動向に配慮するとともに、組織再編税制(スピンオフ税制)、インセンティブ報酬の課税ルールや配偶者控除等の見直し等を踏まえ、人的資本への投資動向を見守りつつ研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
消費税の税率アップの再延期と、それに伴う制度改正の延期のため、予定した研究を延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
予測される制度とのその影響に基づき、研究を進める。
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