研究課題/領域番号 |
25285012
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村上 裕章 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20210015)
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研究分担者 |
勢一 智子 西南学院大学, 法学部, 教授 (00309866)
小島 立 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00323626)
渡辺 徹也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10273393)
村西 良太 大阪大学, その他の研究科, 准教授 (10452806)
石森 久広 西南学院大学, 法務研究科, 教授 (30212939)
笠木 映里 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30361455)
原田 大樹 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90404029)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 公法学 / 行政法学 / 行政訴訟 / 個別法 |
研究実績の概要 |
本研究は、個別行政領域の現状を検討することにより、行政訴訟制度改革のための具体的提言を得ようとするものである。本研究においては、憲法・行政法及び各個別法の現状を踏まえ、4つのクラスター(集合的利益、訴訟類型の多様化、民事訴訟との役割分担、不服申立制度との関係)ごとに共同研究を行い、その成果を総合して上記の目的を達成しようとしている。 本年度は、各クラスターごとの研究を深化させ、その成果の一部を公表することができた(「研究発表」欄を参照)。研究会の活動としては、分担研究者間での随時の意見交換のほか、4月に本年度の活動についてメール会議を行い、7月26日(土)に次に述べるシンポジウムを開催し、9月6日(土)(村上裕章「司法制度改革後における行政判例の展開」)及び同月16日(火)(原田大樹「グローバル化と行政救済制度」)に研究会を行った。 具体的な研究実績としては、上記4つのクラスターのうち、特に研究が進んでいた集合的利益につき、7月26日(土)、九州大学西新プラザにおいて、公開シンポジウム「団体訴訟の制度設計」を開催し、その成果を論究ジュリスト12号(平成27年2月刊行)に公表した。このクラスターに関係するその他の業績として、原田「集団的消費者利益の実現と法の役割」、勢一「都市環境と里山保全」などがある。 そのほか、訴訟類型の多様化に関する業績として、村上・条解行政事件訴訟法5条、同「行政事件訴訟法の改正」、笠木「「福祉的」性格を有する労働」、勢一「行政計画の意義と策定手続」など、民事訴訟との役割分担に関する業績として、村上・条解行政事件訴訟法7条、石森「公有財産の随意契約による売却文書」など、不服申立制度との関係に関する業績として、村上ほか・行政法(行政不服審査法改正にかかる部分)、同「特定秘密保護法と情報公開」、笠木「関連諸法との関係からみる生活保護法」などがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画においては、本年度は4つのクラスターにおける研究の深化に充てることとしていた。しかし、全体として研究が想定していたよりも早く進展し、「研究実績の概要」に詳しく記載したように、本年度においてすでにかなりの研究業績を上げることができた。 特に、4つのクラスターのうち、集合的利益に関する研究の進展が著しく、本科研が主催して、平成26年7月26日、公開シンポジウム「団体訴訟の制度設計」を実施することができた。同シンポジウムにおいては、まず、研究代表者である村上裕章が趣旨の説明と総括的な報告を行ったのち、島村健教授(神戸大学)による「環境法における団体訴訟」に関する報告、斉藤誠教授(東京大学)による「消費者法における団体訴訟」に関する報告がなされた。その後、宇賀克也教授(東京大学)、研究分担者である原田大樹教授(京都大学)、山本隆司教授(東京大学)によるコメントが行われ、その上でフロアを交えて活発な質疑が行われた。 団体訴訟については、従来、環境法や消費者法といった分野ごとに検討が行われてきた。本シンポジウムは、本科研の特色を活かし、この問題について個別法横断的な検討を加えた点で、これまでにない画期的な意義を有する。 その成果は論究ジュリスト12号(平成27年2月刊行)に、「特集」として掲載されている。その巻頭論文において、研究代表者である村上裕章が、シンポジウムにおける議論を踏まえ、包括的な論点の整理と、今後の議論の方向付けを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、研究計画に従って研究を推進し、できるだけ早くその成果を公表する予定である。集合的利益については、具体的な団体訴訟制度の提案も視野に入れて、さらに検討を深めることとする。それ以外のクラスターについても、研究活動をいっそう促進し、成果の公表を急ぐこととしたい。現在のところ、上記の団体訴訟に関するシンポジウムに続いて、時期は今のところ未定であるが、不服申立制度との関係についてもシンポジウムの開催を計画している。 また、上記のように、当初の想定を超えた成果が上がっており、これまで十分検討されてこなかった論点も発掘できたことから、本研究をさらに発展させた共同研究を企画して、来年度からの新たな科研の申請を行いたいと考えている。 課題としては、本研究の申請の時点において、研究会のメンバー全員が九州在住であったが、その後3名が九州大学から他大学(京都大学、大阪大学、早稲田大学)へ転出し、結果として全国に分散することになったことがある。そのため、当初予定を大きく上回る経費(特に旅費)がかかることになり、研究活動に重大な支障を来す結果となった。この点は次回の科研を申請する際に対応を図ることとしたい。
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