研究課題/領域番号 |
25285016
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
田中 則夫 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (40148391)
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研究分担者 |
富岡 仁 名古屋経済大学, 法学部, 教授 (00126880)
都留 康子 中央大学, 法学部, 教授 (30292999)
河 錬洙 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50435989)
加々美 康彦 中部大学, 国際関係学部, 准教授 (30449889)
高村 ゆかり 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70303518)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋生物多様性 / 国連海洋法条約 / 生物多様性条約 / 海洋保護区 / 海洋遺伝資源 / 海洋生物資源 / 海洋環境保護 / 深海底 |
研究概要 |
2013年度は8月と12月に研究合宿を開催し、海洋の生物多様性保全に関する国際法の動態を実証的に解明するための基礎的作業として、普遍的な制度(国連海洋法条約及び生物多様性条約)と地域的な制度(地中海、北東大西洋、東アジア)における議論状況の到達点を明確にするよう努めた。 具体的にいえば、前者に関しては、海洋生物多様性の保全のための諸課題に照らしてみた場合、国連海洋法条約及び生物多様性条約に欠けている諸規則、並びに、解釈・適用の面で見解対立の鋭い諸制度・諸規則が何かについて、国連に設置されたワーキンググル-プおよび生物多様性条約締約国会議での議論を検証しつつ解明した。この作業を通じて、海洋の科学的調査の制度の対象・範囲、海洋遺伝資源に対する深海底制度の適用可能性の問題分析の重要性を研究参加者全員で確認した。また、その問題分析をさらに深めるためには、国際海底機構の実行自体を精緻に検証することの重要性についても確認することができた。 後者に関しては、地中海における統合沿岸域管理の議定書の下での先進的な海洋管理制度の実施及び海洋保護区の展開事例、北東大西洋におけるオスパール条約の下での締約国の実行及び海洋保護区の展開事例、さらに、東アジアにおける日本および韓国による海洋保護区に関する取り組みを分析した。これらの分析を通じ、海洋の生物多様性の保全に関する地域的な取り組みが、普遍的な制度及びその下での議論に一定の影響を与えている現状を知ることができた。 なお、2013年10月にマルセイユで開催された第3回国際海洋保護区会議に田中則夫・都留康子が参加し、海洋生物多様性の保全に関する普遍的及び地域的な諸制度の構築に向けた最先端の議論と実行を見聞する機会をもち、我々の今後の研究遂行上の課題を確認することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、2013年度においては、海洋法が海洋の生物多様性保全の観点から変容を迫られ、かつ普遍的条約・機関、地域的条約・機関において現に実行の蓄積が進行している問題の同定を行うこととしていた。そのために、条約実行及び国家実行の蓄積が進行していると考えられる最も典型的な問題として3つの課題、すなわち、①海洋保護区、②海洋生物(漁業)資源管理、③陸域起因海洋汚染対策を取り上げる予定であった。また、先行研究の網羅的検討と並行して、国連海洋法条約及びそれに関連する国連での会議や作業グル-プの議論、生物多様性の締約国会議などにおける議論について分析を進めるとともに、上記の3つの課題に関する普遍的レベルと地域的レベル双方における諸制度の下での海洋の生物多様性保全に関する条約実行や国家実行を網羅的に収集する計画を立てていた。 上記の目標は、陸域起因海洋汚染対策の課題に関する分析がやや遅れていることを除けば、一応順調に進展していると評価し得る。特に、初年度である2013年度の2度の研究合宿及び研究参加者それぞの分担テ-マに関する調査・検討を通じて、設定された4年間の研究計画の完了を待つことなく、2年目の研究年度である2014年度の終了時に研究成果物の刊行(研究成果の中間的な公表という性格をも有する)を目指すことを、共同研究参加者全員で確認している。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、当初の研究計画に従い、①海洋保護区、②海洋生物資源管理、③陸域起因海洋汚染対策という3つの問題それぞれについて、先行研究を踏まえ、普遍と地域の双方のレベルにおける国際制度の実行を検討し、かかる国際制度が、生物多様性保全という新たな要請に対応して如何にして関連する国際法規則を統合的に実施・実現しているかを明らかにする。特にこれらの問題については、地域的制度を意欲的に展開させている地中海と北東大西洋の二地域、そして日本周辺の北東アジア海域を当面の焦点とする。 第2に、海洋生物多様性の保全に関する国際制度の第三者効、紛争解決フォーラム間の競合の調整など、普遍と地域の制度間の相互連関と調整による海洋秩序形成に伴う国際法の諸問題を実証的に解明する。第3に、その検討結果を綜合し、普遍と地域の関連する諸制度間の相互連関と調整による海洋の生物多様性保全の国際法の形成と実施のダイナミズムを明らかにし、生物多様性保全の要請に応える今後の海洋秩序のあり方を探求する。特に、北東アジア海域における生物多様性保全の地域的制度のあり方についても探求する。 これらの検討作業を推進しながら、共同研究の成果物の刊行(研究成果の中間的な公表)を目指す。成果物の構成については、①海洋法条約、生物多様性条約及びその他の環境諸条約と海洋生物多様性保全の課題、②国際海事機関(IMO)、国連食糧農業機関(FAO)、国際海底機構(ISA)、欧州連合(EU)、地中海、北東大西洋、韓国及び日本における海洋生物多様性保全の取り組み、③国家管轄権を越える海域における海洋生物多様性の保全、④海洋生物多様性保全に関する国際法の現段階、という内容で検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年10月には、研究実績の概要で記したとおり、田中則夫・都留康子がマルセイユで開催された国際会議に出席し、調査・研究を行った。しかし、それ以外にも、海外での(ヨ-ロッパ及びアジアを中心に)調査・研究を行う予定であったが、研究代表者及び研究分担者の年間スケジュールの調整をスムーズに行うことができなかっため、予定通りの研究費使用ができなかった。そのことが次年度使用額が生じた基本的な理由である。 2014年度においては、海洋保護区の設定状況に関する調査を主要な目的とした海外調査を、昨年度以上に活発に行う予定であり、また、海洋生物学又は海洋生態学の専門家からの意見聴取なども予定しており、そのために繰り越された研究費を有効に活用したいと考えている。
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