(a)中小企業における会計、(b)商法または会社法の下で中小企業に求められる開示、及び、(c)中小企業の計算書類の信頼性の向上のための社会的仕組みという、3つの重要な個別的問題について、研究を行っている。 本年度は、第1に、連合王国における中小企業の監査をめぐる監査基準及び会社法制(会社法改正)について調査を行い、監査に代わる保証をめぐる議論についても調査を行った。独立した専門家によるレビューの導入の法制化が検討の俎上に上ったにもかかわらず、挫折した経緯、いわゆるExample 6をめぐる議論と監査基準の改訂など、これまで、我が国では知られていなかった知見を得ることができた。 第2に、フランスにおける中小企業向け監査の議論に関する資料を収集し、フランスにおいては、大企業の監査向けの監査基準、中小企業の法定監査向けの監査基準及び(中小企業の)任意監査向けの監査基準という3組の監査基準が存在し、このほか、主として中小企業向けの会計サービス(presentation des comptes annuels. 財務諸表の調製(コンピレーション)に相当)の基準も開発されている。しかも、2018年になってから、中小企業向け監査基準の見直しに向けた動きが見られた。 第3に、昨年度収集したアメリカ合衆国におけるコンピレーションをめぐる会計士の責任についての文献を分析した。 第4に、EUにおける中小企業の監査をめぐる動向を調査したところ、近時では、企業の規模ではなく、企業の複雑性に着目して議論がなされていることが判明した。すなわち、複雑性の低い企業(less complex entities)の監査という切り口で検討が加えられている。
|