研究課題/領域番号 |
25285032
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺本 振透 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60436508)
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研究分担者 |
原 恵美 学習院大学, 法務研究科, 准教授 (60452801)
原田 大樹 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (90404029)
入江 秀晃 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50600029)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クラウド・コンピューティング / 情報群 / 所有権 / 占有 / 信託 |
研究概要 |
1『研究代表者及び研究分担者の研究会(必要に応じて他の研究者を含む)』を5回行い、「情報拡散における媒介者と媒介者の排他的権利の役割」、「知的財産(権)に対する占有概念」、「フランスの集合体概念」及び「裁判外紛争解決手続のポリシー、とりわけ対話型手続」につき研究の中間成果を交換した。 2『国内の実務家に対する報告及び意見交換』として、第一東京弁護士会司法研究委員会信託法研究部会員との情報交換7回、医療クラウド事業者との情報交換9回を行った。また「社会ネットワーク分析の手法を応用して知的財産法の役割を評価する試み」(日本知財学会ビジネスと知的資産・知財法研究分科会、10月、寺本)及び「医療クラウドこそ社会の要 -法律家が考える」(医療クラウド推進コンソーシアム第1回研究会、11月、寺本)の実務家向け報告を行った。 3『国際的な研究者と実務家に対する報告及び意見交換』として、”Assessing the Role of Intellectual Property Laws from a Social Network Perspective” (ARS '13 International Workshop”, Madrid, 6月、寺本)、”What Makes Medical Records Safe in the Cloud?” (2014 Annual Kyushu University Law Conference, 福岡, 2月、寺本)、”The Current Development of the Japanese e-Government Platform” (2014 International Cyber Law Seminar, Bali, 3月、寺本) を行った。 4『成果物の出版』として、「グローバル化時代の公法・私法関係論」(社会科学研究65巻2号(2014)9頁、原田)を公表した。 5 以上により、平成25年度の課題に基づく調査と研究を、研究を次の段階に進めるのに必要な程度まで進めることができた。 6 なお、学際的な基盤と広い視野の上に成り立つ研究であるから、1ないし4において、本研究の直接の目的ではないが本研究に役立つ情報(他の予算による研究の成果物を含む)の交換がなされ、そのことが本研究に貢献している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「情報群そのものの価値に着目して取引を行いたいという現実社会の要請があることの確認」、「情報群の管理主体を変更する取引を行いたいという現実社会の要請があることの確認」及び「個々の情報の出所に共通する利益を、いちいち個別の出所の負担なしに保護したいという現実社会の要請があることの確認」については、実務界との情報交換により概ね完了している。「情報群を受託財産とする信託を観念することが有効であることの理論的な検証」については、フランスの最新の議論のスタディを通じて着実に進んでいる。「現実の要請に、紛争予防および紛争のかたちによって応えることが、行政指導と約款にもっぱら依存する統御方法では困難であることの検証」については、種々の分野の統御の問題のスタディを通じて広い視野の獲得に成功しつつある。「訴訟を中心とする方法では紛争解決が困難であることの検証」は、分野横断的に米国のADRの実践を観察することを通じて鋭意進めるとともに、次年度の作業の基盤となる種々のポリシーのスタディに歩を進めつつある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、「排他的権利として構成される知的財産権では、情報群の保護に対する現実の要請に応えることが困難であることの、理論的な検証」と「情報群に対する所有権的な権利が設定されるならば、現実の要請に応えることが可能であることの、理論的な検証」(寺本)、「情報群に対して所有権的な権利を観念してこれを信託するという考え方の相当性およびfeasibilityの検証」(原)、「情報群の保護をめぐる問題を解決するために、多元的統御の仕組みが有効であることの理論的な検証」(原田)、および「情報群の保護をめぐる紛争の解決に対応できるADRのポリシーの検討」(入江)を行う。 あわせて、平成25年度における研究を補充し、必要に応じて外部に展開して社会からのフィードバックを得るための作業を行う。
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