研究課題/領域番号 |
25285039
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宇野 重規 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00292657)
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研究分担者 |
小田川 大典 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (60284056)
森川 輝一 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40340286)
前川 真行 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80295675)
谷澤 正嗣 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (20267454)
井上 弘貴 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (80366971)
石川 敬史 東京理科大学, 基礎工学部, 講師 (40374178)
仁井田 崇 名城大学, 法学部, 准教授 (70611630)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 政治思想 / アメリカ / 共和主義 / 立憲主義 |
研究概要 |
研究の初年度にあたる本年は、まずメンバー間の問題意識の共有にあてられた。第1回の研究会では、全参加者が本研究に参加するにあたって、自らのこれまでの研究内容と今後の抱負について報告した。その結果、これまでのアメリカ政治思想研究が時代別に分断され、とくに建国期、19世紀、20世紀の研究を巨視的に概観する思考軸がいまだ明確化されていないこと、現在活発に研究されているロールズ以降の政治哲学についても、アメリカ政治思想史における位置づけを示すことによってその意義がより明確になること、さらに18世紀における啓蒙思想や、20世紀におけるアナーキズムなど、大西洋を横断する知的交流を再検討する必要があること、などが明らかにされた、 続いて第2回の研究会では、仁井田崇による「19世紀アメリカのネイティブ・アナーキズムにおける私的所有の論理」の報告、および宇野重規によるウォールト・ホイットマン『民主主義の展望』の書評が行われた。前者については、ジョン・ロックの所有権思想の影響、ノージックのアナーキズムとの関係、所有権の意味するもの、さらに社会主義とアナーキズムの関係などが議論された。また後者については、ホイットマンとローティとの関係、way of lifeとして理解された民主主義、さらにケイティブのinner ocean論との関わりなどが論じられた。 2回の研究会とは別に、社会思想史学会においてプラグマティズムに焦点を置いたセッションを開催し、小田川大典が司会と討論者をつとめ、宇野重規と井上弘貴がそれぞれ、「政治思想としてのプラグマティズム」、「プラグマティズムと世紀転換期におけるローカルな社会改革の展望」と題して報告を行った。結果として、アメリカ政治思想を貫く重要な水脈としてのプラグマティズムに関して、一定の見通しを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、アメリカ政治思想における共和主義と立憲主義の契機を、(1)建国期から、トランセンデンタリズム、プラグマティズムを通じ、現代のロールズ以降の政治哲学やローティの議論までを、一つの思想的伝統の系譜として理解すること、(2)アメリカ政治思想を、ヨーロッパ政治思想との相互影響・相互交渉として読み解くこと、に重点を置いて分析することにある。 (1)については2回の研究会を通じて、問題意識の共有が深められた。とくにプラグマティズムについては、社会思想史学会においてセッションを行うなど、具体的な研究成果としての形を作り出すことにも成功した。 (2)については、とくに第2回の研究会においてアナーキズムを軸に、検討を進めることができた。とくに所有権思想をめぐるヨーロッパとアメリカの政治思想の視点の異同について議論が深められたのは大きな成果であった。 ちなみに、共和主義と立憲主義を中心に、基礎的文献の収集につとめ、その検討を行うことも初年度の重要な課題であったが、基本的にはメンバーそれぞれが研究を進める段階にとどまり、全員で共有する枠組みを構築することは、次年度以降の課題として持ち越された。
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今後の研究の推進方策 |
今後も基本的には年2回程度の研究会と、学会におけるセッションの企画を通じて研究を進めて行きたい。2014年度についても社会思想史学会で企画提案を行っており、これが実現すれば「超越主義の社会思想」と題してセッションを開催する予定である。関連して、新たな研究メンバーの追加や、メンバー外部への協力要請についても検討している。 もっとも重要なことは、各自の研究を基盤に、研究会において問題意識の明確化と共有を進めていくことである。とくに共和主義と立憲主義の基礎的文献表の確定とその検討作業を進めていくことが、今後の最重要課題となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究会を東京、大阪で行ったため、東京、大阪、あるいはその中間の名古屋に勤務する研究分担者の旅費負担が少なく、それ以外の場所に勤務する研究者の分担者の旅費負担が重くなった。結果として、一部の研究者分担者の旅費に残額が生じ、次年度に使用することとなった。 次年度は、研究会の開催場所を検討することで、研究分担者間の旅費負担を修正するとともに、どうしても旅費負担の大きい地域に勤務する研究分担者への旅費の配分を増やすことにしている。
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