研究課題/領域番号 |
25285040
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋月 謙吾 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60243002)
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研究分担者 |
玉井 亮子 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (10621740)
舟木 律子 中央大学, 商学部, 准教授 (20580054)
城戸 英樹 京都女子大学, 現代社会学部, 准教授 (30582358)
南 京兌 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50432406)
永戸 力 愛知大学, 法学部, 准教授 (60410768)
真渕 勝 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70165934)
近藤 正基 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (80511998)
李 愛俐娥 早稲田大学, 付置研究所, 教授 (10533713)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地方分権 / 政治的分権 / 行政的分権 / 財政的分権 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
カナダ:州政府と基礎自治体の党派性の違いから、基礎自治体に対して厳しい制度改革(行政的分権と政治的集権)が行われた。行政的分権と政治的集権が短期間(1年余り)で行われたこと、またその変化が大きかったことから急進的と評価できる。行政的分権に関しては、社会政策を中心に分権化が行われ、1997年から98年の間にトロント市の財政支出はおよそ二倍(3億9620万ドル(1997年)→7億9820万ドル(1998年))に急増した。それにもかかわらず財政的分権は行われなかったため、急進的な改革と評価できる。 チリは1989年の民主化以降段階的に政治的分権化が進められてきた。ピノチェト軍政期(1973-1990)には、これらの自治体の首長は大統領によって任命されていたが、民主化後、まず基礎自治体レベルの分権が行われる。1992年に市長市議会議員公選制(市長は市議会議員から互選)が導入され、1996年に市長市議一括直接選挙へと法改正、さらに2001年には市長市議選挙分離直接選挙への法改正が行われた。また、広域自治体レベルでも2013年になってようやく州議会議員の公選制(それまでは市長市議会議員から互選。州の首長である州監督官intendente regionalは任命制維持)が導入された。2014年現在、広域自治体の首長が公選制でない国は、南米地域においてはエクアドルとチリの二国のみである。 フランスでは1980年代の社会党政権時に地方分権化政策が大きく展開し、その後、漸進的に地方分権政策が継続して進められている。新たな地方自治体層の創設、国と地方の経費負担配分の見直し、また2000年代以降は地方自治体間の権限重複の解消を目指した改革が実施されている。しかしその一方で、国からの権限移譲に財源補償が十分ではない、との認識を自治体側が持っており、さらに経済低迷から国のみならず地方においても税収減が重なり、財源問題は深刻さを増している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先進国(日本、イギリス、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、韓国)と途上国(南米諸国とフィリピン)を、連邦制国家と単一主権国家、大統領制国家と議院内閣制国家に分けて、政治制度の観点から各国を配置する。その上で、地方分権を政治的分権・財政的分権・行政的分権の三つに分け、中央政府が自らの権力を弱める地方分権を行うのはなぜなのかという問いを発し、地方分権政策が行われる原因を解明することが本年度の目標である。 研究実績の概要にて記述したように、カナダ、チリ、フランスにおける分権の理由について分析を行った。紙幅が制限されているため、イギリス、ドイツ、日本、韓国については概要を書く事ができなかったが、順調に進んでいる。例えば、イギリスの場合、成文憲法を持たない議会万能の国として知られ、中央政府の権力がきわめて大きい単一主権国家のイギリスにおいて、1990年代後半から突如としてスコットランドへの政治的分権が行われたのはなぜかという問いを発し、次のような原因を見つけた。すなわち、最も漠然とした背景要因として、中世以来、イングランドと武力衝突を繰り返し、イングランドとは異なる文化・社会諸制度を育んでいたスコットランドの独立国としてのナショナリズム、イングランド人とは異なる独立の民族としてのスコットランド人としてのプライド、アイデンティティの強さが挙げられる。このような、ややもすれば連合王国からの分離を志向しかねない厄介なスコットランド・ナショナリズムの動きに直面したロンドンの中央政府が、スコットランド・ナショナリズムの高揚を抑え、スコットランドを連合王国につなぎ止め、単一主権国家しての統合を維持すべく、やむを得ず行った譲歩がスコットランドへの権限移譲である。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象国の地方分権の原因をまとめる。そのうえ、分権の程度が急進的なのか、漸進的なのか。分権の効果が肯定的なのか、あうりは否定的なのかを分析する。例えば、イギリスにおける分権の程度については次のようにいえよう。 それまで存在しなかった領域政治を新しく創出したという意味では急進的である。しかしながら、日本の地方自治体のように地方税、地方交付税を合わせた巨大な裁量的財源がスコットランド政府に与えられたわけではなく、NHS(国民健康サービス)のような国営事業、NDPBs(非省庁型公共機関)、エージェンシーなどへの多額の予算配分を余儀なくされている現状からすると、財政面を中心とした中央政府による制約は依然として大きい。
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次年度使用額が生じた理由 |
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次年度使用額の使用計画 |
ドイツから専門家を招聘するつもりであったが、先方の事情により先送りになった。 現在日程を交渉中であり、夏休みの前には招聘することができると考える。 本研究は27年度にこれまでの研究成果を取りまとめ、研究書を出版する予定である。研究書を出版するためには印刷費が必要である。また、2年間の調査から不足する資料や情報を補うとともに、合宿研究会に使用する。専門家招聘の旅費などに使用する。
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