研究課題/領域番号 |
25285042
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
品田 裕 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10226136)
|
研究分担者 |
大西 裕 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90254375)
藤村 直史 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (20551493)
山田 真裕 関西学院大学, 法学部, 教授 (40260468)
河村 和徳 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (60306868)
今井 亮佑 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (80345248)
砂原 庸介 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40549680)
濱本 真輔 北九州市立大学, 法学部, 講師 (20625850)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 選挙研究 / 選挙区再編成 |
研究概要 |
現在、日本の国会は一票の格差是正のための選挙区割り改正という重大問題に直面している。この問題は、都道府県議会においても課題となっており、そのこと自体が日本の地方政治に大きな影響を与えている。また、市町村合併が進む一方、公職選挙法が改正され、新しい区割りが検討されつつある。本研究は、都道府県議会の実証的な比較分析を通じ、①近年の選挙区割りの改正がどのような場合に進展するのか、②選挙区割り改正の有無や程度は、有権者や議員にどのような影響を与えるのかを調査分析し、選挙区割り改正の原因とその影響を総合的に明らかにすることを目的とする。 初年度は、文献等で選挙制度や概要について理解を深めるとともに、一部の道府県を対象として、選挙区の変遷を調べ、時系列的に整理すること、それらを選挙結果と照合すること、議会内での改正手続きやパワーバランス、知事との関係などの背景について調べることから、研究を始めた。特に山田による北海道、砂原による近畿圏などの調査が非常に興味深く、かつ進度も速かったので、研究全体にとってもたいへん有益なものとなった。他方、初年度には、途中で公職選挙法の改正があり、都道府県会議員の選挙区割りについての規定が大きく変わった。この点で当初の見通しと相違が生じた。そのため、新法の理解に努めること自体が重要な作業となった。総務省等からの情報提供もいただきながら、メンバー各自の調査と研究会を通じ情報の共有をはかり、次年度以降の計画を修正した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、研究代表者の事情と今回の研究対象である都道府県議会議員選挙区の区割りを規定する公職選挙法の改正により、当初予定した計画通りに研究を行うことができなかったので、当初計画と現況の単純な比較はできないが、いくぶんかの遅れを含みつつも、計画全体としてはおおむね順調に進展したと考えている。初年度の目標は、メンバー全員に計画の趣旨および分担を再度確認すること、担当分野の調査と実態記述、文献での制度等に関する研究、これら知識の共有であった。選挙区改定の原因としては、議会内要因と議会外要因に分けて調査することにしていた。この点については、一部の道府県を対象に選挙区の変遷を明らかにし、それらを選挙結果と照合し、改定の経緯を調べた。ここから、議会内での改正手続きやパワーバランス、知事との関係、また市町村合併や総定数削減などの背景について検討することができた。選挙区改定の政治家への影響については、政策や政治活動の観点から、また、選挙区改定の有権者への影響は、投票参加や投票行動それ自体について検討することにしていた。これらについては、検討事例を探索し当該選挙結果などを収集するとともに、かつて一部のメンバーが参加した全国都道府県議会議員調査や既存のサーベイデータ、あるいは都道府県議会選挙の選挙広報(データ化も含め)の利用可能性を検討した。これらの検討を通じ、今次の公職選挙法改正を受けて予想される区割りの改正と2015年統一地方選挙への影響を調査分析する際には、今後、投票率、有権者の認識、無投票当選の状況、議員同士のカルテル関係、異なるレベルの地方議員間の系列やキャリア形成、議員の選好などに注目することにした。
|
今後の研究の推進方策 |
公職選挙法の改正で、都道府県会議員の選挙区割りが変更される可能性が大きくなったため、新法の規定について理解を深めるとともに、改めて各自の関心・事例調査を行う地域について見直しを行い、今年度の研究に臨むこととした。対象地域としては、北海道・大阪府・兵庫県に加えて、福島県・茨城県・福岡県または熊本県などを深く調べること、その際には、議会事務局や選挙管理員会事務局に対し調査をすること、また特定の選挙区(例えば、政令指定都市、離島など)に着目した調査を行うこととした。内容的には、選挙区改定状況を引き続き追跡することに加え、県議会レベルの「一票の較差」、定数サイズの不均衡が改定の状況にもたらす影響、議会内の党派構成と改定手続きの関係なども精査することとなった。2015年春には、統一地方選が、ほとんどの道府県で行われるが、これを素材とした分析を行うための準備を進める。区割りと投票率、有権者の認識、無投票当選の状況など投票行動・選挙結果に注目するこれらの分析と同時に、候補者・議員に着目した研究も行う。党派構成、知事との関係、さらには、議員同士のカルテル関係・異なるレベルの地方議員間の系列やキャリア形成・議員の選好などが選挙区改定にどう影響するのか、あるいは改訂後にどのような影響を受けるのかを解明したいと考える。 以上のことを実現するため、今年度は、初年度の積み残しを速やかに終了させるよう努めるほか、上記の諸課題を解明するための分析および裏づけとなる補完的な分析を行うことを目標に展開する。そのため、各地への調査出張、データの整理・データベースの構築、文献研究、研究会を行う予定である。研究会では、メンバーは自分の分担する実証研究の中間報告を行い、理論や他の資料・データとの整合性を考慮しつつ、討論を深める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
初年度は、研究代表者について年度途中から事情により急速に時間的余裕がなくなったことに加え、本計画の研究対象である都道府県議会議員選挙区の区割りを規定する公職選挙法が大幅に改正されたことにより、各地での調査などの計画を変更し、それを実現することが難しくなった。そのため、現地での研究調査活動のための旅費とその後のデータ整理に関する経費の執行が当初計画より小さくなった。 次年度について、調査する地域とその際の注目点は既に再検討したので、その方針に従って、今後、改めて実施予定であり、次年度以降に申請する研究費と併せ、未使用額は、これらの調査旅費に用いる予定である。
|