研究課題
本研究は、1960年代後半から70年代前半にかけての時期に、特定地域におけるアメリカの安全保障政策が、他の地域におけるアメリカと主要同盟国との関係に、経済現象などを媒介していかなる影響を及ぼしていたのかを、複数の事例を検証することによって浮き彫りにすることを目的に進めてきた。換言すれば、冷戦期の西側陣営にみられた安全保障の<地域横断性>と<経済現象との相互作用>にグローバル化と冷戦の交錯を見出し、その一部がデタントなる現象に結びついた可能性を検証してきた。その結果、研究代表者と研究分担者は、現時点で次のような分析結果に至った。ベトナム戦争が混迷を増し、国際収支赤字が拡大したことにより、まずアメリカ国内では、対外関与を後退させるべきとの議論が噴出したほか、国防戦略を見直し、米軍を刷新して欧州での抑止力を回復しようとする動きも静かに始動した。また、アメリカが国際収支赤字の問題に対処する取り組みの一環として、西ドイツや日本に対して米国製兵器の購入や米軍駐留経費の負担を求める「オフセット交渉」を進めたり、あるいは、東西両陣営の通常兵力を相互に均衡を保ちながら削減することを呼びかける「レイキャビク・シグナル」を発するなどした結果、NATO諸国間の関係や日米関係にも影響が及んだ。さらに、米国が経済の停滞と財政的な制約に直面する中で、英国が「スエズ以東」から撤退することになり、ペルシャ湾地域で新独立国の樹立に基づいた地域秩序を構築する外交も展開することになった。つまり、ベトナム戦争や前方展開戦略、そして金・ドル兌換制などから生じた国際収支赤字を削減する取り組みをアメリカが進め、またアメリカ国内で経済が停滞し、「過剰な対外関与」に対する批判が高まるなどした結果、アメリカの対欧州政策、対日政策、対ペルシャ湾政策などが修正や調整を迫られ、その一端がデタントを担うことになったのだった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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外交
巻: 31 ページ: 110-113
Social Science Japan Journal
巻: 18-2 ページ: 244-246